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国の“事前審査"が必要な東芝、簡単に許されないファンド傘下の非公開化

国の“事前審査"が必要な東芝、簡単に許されないファンド傘下の非公開化

1月に東証第一部に復帰したばかりの東芝

東芝の経営陣が、多くのステークホルダーに歓迎される施策を打ち出すことを期待する。英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズなどが、東芝に買収提案をしたことが明らかになった。東芝側も提案が事実であることを認め「慎重に検討する」と表明した。

CVCは、TOB(株式公開買い付け)を通じて東芝の株を非公開化する考えとされる。車谷暢昭社長兼最高経営責任者(CEO)をはじめ東芝の経営陣は、経営方針を巡って筆頭株主と対立している。これを打開するため、買収提案を前向きに検討するとの見方もある。

東芝は経営危機から脱し、1月に東証第一部に復帰したばかり。“モノ言う株主”からの圧力は、確かに今後の事業展開の障害になるかも知れない。しかし経営側が、企業統治の強化、ましてや経営者の保身を目的にTOBを受け入れる判断をするとしたら、賛成できない。

東芝は日本の社会インフラの一角を担う重要企業だ。経営危機とその後の再建に、政府や取引先企業がさまざまな形で協力した。また日本の安全保障の観点から、改正外為法で重点審査対象となり、国の事前審査が必要な会社。海外投資ファンド傘下になるのがすんなり理解を得られるだろうか。

ある投資ファンド首脳は「(非公開化には)株主総会の特別決議が必要だが、賛同を得られるのか。また(会計問題を起こした東芝が)非公開化で世間から信頼されない企業になってしまう」と懸念を示した。これまで東芝を応援してきた少数株主や就業員も、経営が見えにくくなる非公開化を歓迎するかはよく考える必要がある。

特定株主の要求に従うことがベストではない。しかし東芝は3月の臨時株主総会で、総会の運営に疑義を突きつけられている。経営陣は、多数のステークホルダーを納得させるだけの明確な方針を示すべきである。企業統治の強化・迅速化は、そうした合意の元にあるべきだ。

東芝には、社会から必要とされ、産業界の模範となる企業になってもらいたい。


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日刊工業新聞2021年4月8日

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