東京・杉並区の庁舎に総合案内ロボット、区民サービスは向上する?
東京都杉並区はミライズ(東京都港区、田中徹社長)が提供する据え置き型総合案内ロボット「ロボコット」を本格導入した。実証実験による自動走行型との比較で、応答の自然さや転倒事故のリスクの少なさを評価した。本庁舎1階に2台を設置し、窓口案内のほか英語などの外国語の問い合わせにも対応する。初年度の経費は、ロボットの購入費やクラウドの利用料などで約241万円を見込んでいる。(渋谷拓海)
区では本庁舎1階に並ぶ住民サービスのための窓口で、利用者に対応する総合案内員のほとんどに委託職員を配置している。利用件数は年間約15万件に達する規模だ。「1分当たり1人のハイペースでひっきりなしに対応している。限られた人員を有効活用するために、ロボット導入を考えはじめた」(石河内賢介護保険課長)という。
区は当初、人間のように庁舎内を動き回るロボットの導入を検討していた。実証実験に参加する企業を募集したところ、自動走行型ロボットを1社が、据え置き型を2社が提案した。黒沢勝美企画調整担当係長は「据え置き型ロボットもあると知り、幅広く検討しようということになった」と経緯を説明する。
実際の実証実験は本庁舎1階で2020年11月10日―27日に実施した。自動走行型と据え置き型のロボットをそれぞれ2種選定し、実験した。窓口利用者が「引っ越し手続きがしたい」などと呼びかけると、ロボットが対応窓口の場所を教えるといった具合だ。
その結果、満足度が高かったのは据え置き型として設置したロボコットだった。区の調査によると、答えられない質問に対し「無言」にならずに係員に尋ねるよう利用者に促し、発音も自然だったほか、職員による機能追加が容易なことが高評価につながった。
実験時に自動走行型に事故や不具合の発生はなかったが、据え置き型は転倒事故のリスクもない。ロボコットはかわいらしい猫型のぬいぐるみを着ているため、利用者に対する威圧感もない。区のニーズにぴったりマッチした格好だ。
ロボコットは人工知能(AI)を搭載している。そのため利用者が質問したり、ロボットが答えられない質問の答えを職員が登録したりするたびに応答精度が向上する。区は21年度からの本格導入を決め、4月中にロボコット用の「Q&Aリスト」を作成して覚え込ませた。5月からは窓口に立つ現場の職員が、直接情報を更新したり追加で入力したりする。利用者とのコミュニケーションは画面、タッチ操作、音声発声、音声認識の四つのインターフェースで行う。
区の人口は約57万人で、うち外国人が約1万5000人。しかも近年急増する傾向にある。このためロボコットは英語や中国語、韓国語で応答し、外国人利用者のニーズに対応する。また、区内では約2000人のネパール人が居住するのも特徴で、ネパール語への対応も検討している。