コロナが早めた「ロボット時代」の到来、空港や港湾、ホテルで続々実証
コロナ禍はビジネスの世界を大きく変えた。従来の対人中心から非接触型への変化により、多くの産業がモデルチェンジを余儀なくされた。新たに活用する機会が増えたのがロボティクス技術だ。2020年度は新型コロナウイルス感染症を踏まえた課題設定をし、東京都は4回の実証実験を実施した。非常事態下に積んだ知見が「ロボット時代の到来」を前倒す可能性もある。
検温や消毒にロボットが活躍
「検温結果は正常でした。お通りください」。2020年8月末、THKの検温ロボットの声が「ホテルルートインGrand東京浅草橋」(東京都台東区)のロビーにこだました。ロボの前に立つと人を検知し体温を自動測定。37度5分未満だと、ロボの伸ばした腕が下がり通行が可能になる。
東京都が運営する新型コロナの宿泊療養施設と同じような構造を持つホテルでのロボを利用しての実証実験の一幕だ。客室のあるフロアでは黙々と消毒作業するロボ、客室内ではコミュニケーションロボットの姿もあった。
不特定多数の人が多く集まる複合施設もコロナ対策に追われた。入り口での検温や消毒、列に間隔を空けてならぶなど徹底した感染対策が実施された。「ニューノーマル」での業態を模索し始めている。
遠隔でロボットを介して顧客と会話
そうした中では、複合施設「東京ポートシティ竹芝」(東京都港区)で9月に試された遠隔操作ロボットには新たな形の可能性を感じさせた。サイバーエージェントと大阪大学が手がける遠隔操作ロボットは通行客に声かけし、ビル内の飲食店に誘導できるかなどを試した。1階から3階に複数台を設置し、遠隔でスタッフがロボットを介して顧客と会話できる。呼び込みが制限される中、ロボットが人の流れを変えれば飲食の世界も大きく変わるはずだ。
4足歩行ロボが施設を警備巡回
同じく9月に複合施設「羽田イノベーションシティ」(東京都大田区)で実施した実証実験では、鹿島が導入した米ボストン・ダイナミクス製の4足歩行ロボット「SPOT」が広いエリアを走行していた。施設内の警備巡回を想定していて、遠隔操作だけでなく、決められたルートを自律歩行する能力も備わっている。
PCR検査の補助もロボットで
コロナ禍でも最も耳にしたアルファベット3文字は「PCR」だろう。そのPCR検査の受け付け業務や検査用の検体の受け取りなどに、オリィ研究所(東京都港区)の案内ロボットやスマイルロボティクスの搬送ロボットなどを使った実験も2月末から3月にかけて竹芝客船ターミナル(東京都港区)で模擬的に実施した。
遠隔操作ロボットで検体や書類の内容を確認したり受け渡したりしたほか、受領した書類や検体を搬送ロボットが積み込み、積み卸した。非接触の実現だけでなく、省人化への効果も確認できた。
ロボットより身近に、活用は次の段階へ
コロナが収束しても未知のウイルスがいつ到来するかはわからない。そして日本の場合は人口動態から、少子高齢化という確実に訪れる危機も間近に迫っている。ロボットの普及は不可欠だ。コロナ危機で産業用以外のロボットは社会でより身近な存在になったのは間違いない。実験で積んだ知見をいかすことで、ロボット活用は次の段階に入る。