電子部品メーカーが量産に乗り出した全固体電池、それぞれの特徴は?
先駆けて量産
電子部品メーカーは他業界に先駆けて全固体電池の量産に乗り出した。自社の既存生産技術を使った小型で大容量を特徴とするもので、高い安全性が求められる、身に付けて利用するウエアラブル端末向けやスマートフォン向けなどで市場を開拓する狙いだ。
電子部品業界は自動車関連や通信機器関連への依存度が高いが、幅広い産業での活用が予想される同電池により、新たな成長の柱が生まれるのか注目されている。
2020年からTDKや村田製作所、FDKが全固体電池の生産を始めた。21年内にはマクセル(東京都港区)と太陽誘電が量産を開始する予定。21年度は電子部品メーカーによる全固体電池ビジネスが本格化する。
厚さ1−6mm
各社は積層セラミックコンデンサー(MLCC)の積層技術など既存の生産技術を応用して全固体電池を開発。大半が表面実装可能なタイプで、セラミック固体電解質を使用し、液漏れや爆発、火災の心配がないことが特徴だ。サイズは、縦4ミリ―10ミリメートル、横が3ミリ―10ミリメートル、高さが1ミリ―6ミリメートルと小型。日本製を売りに、信頼性の高さを訴求する。
次の段階として各社は、バリエーションを増やすための開発に着手する。
TDKは今後、利用用途を広げるため「コイン形や、既存品よりもう少し大きな表面実装型を開発したい」(石黒成直社長)としている。
村田製作所は容量が現状比20―30%大きいタイプの開発を進めている。長時間利用前提のワイヤレスイヤホン向けで21年の早い段階には量産を検討する。将来は「ワイヤレス充電IC(集積回路)などと組み合わせてモジュールを一体化して提供したい」(モジュール技術統括部)と見据える。
硫化物で優位
マクセルは他社との差別化として硫化物系固体電解質を使った直径9・5ミリ×高さ2・65ミリメートルコイン形の開発を進めていたが、さらに表面実装型も開発した。「硫化物系固体電解質は容量と出力で優位性がある」(中村啓次社長)としている。
安全性向上や長寿命という全固体電池の特徴は、事故撲滅や電動化による環境負荷軽減など世の中の流れを見ても普及は確実なようにみえる。
だが電子部品各社の全固体電池は小型が特徴で、ウエアラブル端末やスマホなどターゲット分野も似通っている。今後、生産体制の強化や製品自体の差別化がシェア獲得のカギとなる。
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