くず餅から「もちもち」化粧水、地域の「JAPANブランド」はどこまで広がるか

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同社の化粧水「BIOGENICS ESSENCE」

地方の中小企業には個性的かつ、機能面でも優れた製品を送り出す企業が数多く存在する。ただ、地域経済は人口減少に伴い縮小傾向にあり、地域内での販路拡大がなかなか難しいのが現状だ。地域の地盤沈下を防ぐためには、大都市圏や国外に販路を拡大する必要がある。

経済産業省・中小企業庁は、地域に存在する中小企業の全国・海外展開の取り組みやブランド確立を支援する「JAPANブランド育成支援等事業」を推進している。

同事業では、対象の中小企業に対し、最大2000万円の補助金を支給。また、商工会議所や組合など支援機関が中心になる場合も、同額を補助する。

新型コロナウイルスが流行した2021年度はクラウドファンディングや国境を超える越境ECなど地域中小企業の「新潮流」を積極的に支援した。

3月5-7日に行われた報告会から、「JAPANブランド制度」の活用事例を紹介する。

くず餅から「もちもち」化粧水

船橋屋(東京都江東区)は創業216年のくず餅屋。原材料である小麦のでんぷん質を450日間発酵させて作り上げるなど、保存料無添加のくず餅が看板商品だ。

かねてから、くず餅を海外で販売する展望を持っていたが、消費期限はわずか2日間しかないため、手を出せずにいた。

そこで目を付けたのが、くず餅から連想される「発酵」や「もちもち」などのキーワードを押し出した派生商品だ。同社はくず餅の原材料を発酵熟成する際に見つかった独自の「くず餅乳酸菌」を活用した「乳酸発酵化粧水」を10年かけて開発した。化粧水をきっかけにくず餅への興味を持ってもらう狙いもある。

化粧水を発売するのに必要な効能評価試験やモニターテスト、ヒアリングなどを行う際に、JAPANブランド制度を活用した。実際に行った効能評価試験では化粧水の保湿効果を確認。「もちもち」や、潤いを保つ肌の表現として「くず餅肌」などのワードで、化粧水とくず餅を結び付け、くず餅を国内外に訴求していく考えだ。

京都府北部、与謝野町の特産品であるホップを原料としたクラフトビールを販売するローカルフラッグ(京都府与謝野町)もJAPANブランド制度を利用した1社だ。

同社は新ブランドのクラフトビール製造のために制度を利用。手始めに、クラウドファンディングサイト「マクアケ」を利用し、テスト販売を行った。25日間で約350万円を売り上げ、ブランド設立の足掛かりを作った。

天橋立で大量発生する牡蠣をビールのろ過に使用する研究も進めている

同社のクラウドファンディング成功について、マクアケの地域事業部の菊池凌輔部長は、「製品に込められたストーリーだけでなく、消費者の目線で考えたときの製品の良さをアピールできた。SNS(会員制交流サイト)を活用し、ビールに対する盛り上がりや一体感を消費者との間に作れたことが大きかった」と分析する。

同社は今回の経験から、すでに第2弾の製品開発も進めている。

桐生の地から生まれたマスク、世界へ

商工会議所が中心となって販路拡大に取り組んだ例もある。群馬県桐生市は1300年以上続く織物産業の町。コロナ禍によるマスク不足の時期には、桐生の繊維事業者たちが特殊技術で布製のオリジナルマスクを制作した。桐生商工会議所がウェブサイトでPRしたところ、多くの問い合わせが寄せられた。

このチャンスを活かし、販路を開拓するべくJAPANブランド制度を活用し、越境ECモールの大手、「イーベイ」へ出店を始め、11社19品目のマスクを出品した。本格的な活用自体はこれからだが、基盤はしっかりと構築することができた。

桐生市のイーベイ上のモール

サポートを行ったジェイグラブ(東京都渋谷区)は、「モールを開設してからどのくらいの時間が経過したかも信頼の目安になる。今後は顧客にインフルエンサーを用いてSNSで魅力を伝えたい」と話す。

中小企業の製品的な付加価値だけではなく、販路拡大を支援するJAPANブランド制度。オンライン技術の進展も相まって、魅力を伝えられる顧客は地域だけではなく、海外にも広がった。だからこそ、直接製品を見に来ることができないなど顧客への魅力の伝え方や顧客視点の付加価値の創造が不可欠だ。

企業庁では同制度に加え、関係団体との連携を通じて、「アフターコロナ」に向け、中小の新たな挑戦を支援する。

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