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牡蠣の殻で汚水を浄化、「排水を出さないトイレ」を開発した広島・福山の中小企業

牡蠣の殻で汚水を浄化、「排水を出さないトイレ」を開発した広島・福山の中小企業

処理槽の中にカキ殻を入れる(スリランカで施工)

排水再利用のトイレ普及

【実績700件】

永和国土環境(広島県福山市、岡本良一社長、084・924・7402)は、微生物の力でし尿を分解・浄化し、洗浄水として再利用して排水を出さないトイレ「アクアメイク」を開発。地方公共団体などを中心に、これまで約700件の設置実績がある。国連の持続可能な開発目標(SDGs)の6番目の目標「安全できれいな水とトイレを」の実現につながるとして、普及に力を入れている。

【カキ殻で浄化】

特徴は広島県の特産品、カキの殻を使って浄化すること。汚水タンクの内部は7層に分かれており、最初の3層は通常の浄化槽と同様の構造。天然の微生物の力で生物化学的酸素要求量(BOD)が1リットル当たり260ミリグラムの汚水原水を同20ミリグラム程度まで浄化する。

さらに残りの4槽に入れたカキ殻と活性炭により、魚が住める同5ミリグラムまできれいにし、洗浄水に再利用する。カキ殻を使うのは、多孔質の表面に微生物が住み着き浄化能力が上がるため。炭酸カルシウムが溶け出し、アンモニアに由来する硝酸を中和する効果もある。

【実証事業に採択】

処理槽本体はFRP製。内部で汚水を浄化し再利用する

同社のSDGs対応は、国際協力機構(JICA)の中小企業海外展開支援事業で普及・実証事業に採択されたことが契機。スリランカの世界遺産ポロンナルワ遺跡にアクアメイクを設置するため2018年に輸出した。現在設置工事をほぼ終えたが、コロナ禍で完成検査が中断している。

さらに20年8月にはJICAから「SDGsパートナー」にも認定され、JICAのほかのSDGs関連プロジェクトでも採用される可能性が高まった。

コロナ禍で海外案件が滞る中、国内での普及拡大にも意欲を燃やす。浄化槽だと一つの事業所に1カ所しか設置できず、複数のトイレを設置するには浄化槽まで排水管を引く必要がある。

アクアメイクは法律上、くみ取り便槽扱い。排水管なしで何カ所でも設置できる。「SDGs対応と、職場環境改善の双方から、企業の引き合いが増えている」(岡本修次海外事業部長)という。

日刊工業新聞2020年2月12日

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