3Dプリンター活用で多孔質金型の実用化、ダイカスト金型大手の「夢」実現
ダイカスト金型大手の七宝金型工業(愛知県津島市)は、3Dプリンターを活用し、金属積層造形(AM)により離型剤が染み出る多孔質金型「ポーラス金型」を開発している。松岡社長に開発の進捗(しんちょく)状況などを聞いた。(名古屋編集委員・村国哲也)
―開発の狙いは。
「海外製金型の品質が上がり、将来の不安から他社にできない何かを探し3Dプリンターを2015年に導入した。金型は冷却用水管成形にAMが期待されたが価格競争状態で、医療機器などの部品も試作し売り込んだが事業化は難しかった。冗談半分でポーラス金型の案が出て社員は『夢みたい』と笑ったが、難しいからこそ挑む価値があると考えた」
―開発体制はどうなっていますか。
「18―20年の戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)に選ばれた。岐阜大学の新川真人准教授、金沢大学の古本達明教授にそれぞれ共同研究を打診し快諾を得た。運良くアドバイザーはトヨタ自動車にお願いできた。開発部門は4人。研究職志望の新入社員を中心に据えた」
―進捗状況は。
「担当者は苦労したと思うが、1年後の初トライはすんなり成功した。その後、改良を重ね、今は孔の大きさを型利用に必要な50マイクロメートル(マイクロは100万分の1)以下にほぼできる。試作レベルなら外部からの塗布なしに孔から染み出る離型剤だけで成形が可能だ。有力ダイカストメーカーなどから引き合いがあり、実用化に向け詳細を詰めている」
―現在の課題と展望を教えて下さい。
「成形品の強度に課題があり狙った孔の形や位置を制御する技術が必要で、異なる成形法も開発中だ。企業との用途開発も本格化する。まず決算月の5月までに売り上げを立て、来年度の量産・実用化を目指したい。『ダイカスト金型以外にも使える』とのユーザーの評価もあり、将来は看板製品にしたい」