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金型メーカーの“かゆいところに手が届く”!優秀なメンバー揃いの C&Gシステムズ

雑誌『型技術』連載 金型の未来を拓く技術者たち
金型メーカーの“かゆいところに手が届く”!優秀なメンバー揃いの C&Gシステムズ

CAM開発部の面々。左から、CAMエンジン開発課の小林正佳さん、ソリューション開発課の神宮和行さん、CAMエンジン開発課長の鎌田竜也さん

「CAM-TOOL(キャムツール)」や「EXCESS-HYBRIDⅡ(エクセスハイブリッドツー)」など金型加工向け CAD/CAMの開発・販売・サポートを手がける C&Gシステムズ。国内開発の方針を貫き、ユーザーの声をスピーディに反映することで、金型メーカーの“かゆいところに手が届く”製品を提供している。近年は、部品加工向けの CAD/CAMや金型・部品製造業向けの生産管理システムなど周辺分野の市場開拓にも力を入れる。

鎌田竜也さん、小林正佳さん、神宮和行さんの3人は、東京本社の CAM開発部に所属する若手エンジニアだ。ユーザーの生産性向上に役立つ CAMの新機能開発や改善をそれぞれ担当。仲間のサポートにも助けられながら、プレッシャーのかかる開発業務に取り組んでいる。

同社は、CADを得意とするコンピュータエンジニアリング社と CAMに強みをもつグラフィックプロダクツ社の 2社が合併して誕生した。金型向けを中心に製品展開し、国内外の累積導入実績は7,000事業所に上る。中でも穴加工から同時 5軸加工まで対応する CAM-TOOLは、金型特有の加工事情を踏まえた各種の機能により、プラスチック金型やダイカスト金型を高効率で品質良く加工できると評価を得ている。開発だけでなく販売やサポートを自社で行っている点も特徴である。

同社の東京本社が入居する天王洲セントラルタワー

若手中心の開発部門

CAM開発部には、CAMエンジン開発課、プロダクト開発課、ソリューション開発課の3課があり、20代や 30 代を中心に約 30 人のエンジニアが所属している。鎌田さんと小林さんが所属するCAMエンジン開発課は、CAM-TOOL の心臓部であるエンジンの開発を担当。プロダクト開発課は同製品のユーザーインターフェイス(UI)を主に開発する部隊だ。一方、神宮さんが所属するソリューション開発課は、SOLIDWORKS にアドオンした「CG CAM-TOOL」や外部に OEMで供給するCAMなど、CAM-TOOL以外の CAM開発全般を担当している。

2015年に中途入社した鎌田さんは、CAMエンジン開発課の課長として開発業務の進捗管理やメンバーの育成など重要な仕事を任されている。岩手県立大学ソフトウェア情報学部を卒業し、技術系の派遣会社でさまざまなソフト開発を経験。その中で工作機械を動かすための NCデータの作成に用いる「CAD/CAM」という存在を知り、転職を機にモノづくり関連ソフトの世界に飛び込んだ。「前職では、『何のソフトだろう?』と思いながら開発していたが、やり始めると数学的におもしろく、興味が尽きない」と話す。

同じくエンジン開発に携わる小林さんは、2019年に入社した若手のエース。茨城大学工学部で、GPU(Graphics Processing Unit)の並列処理機能を CADや CAMの性能アップに応用する研究に携わり、社名に聞き覚えのあった同社に応募した。経験は浅いがすでに個別の開発テーマを任されており、部内での期待も大きい。ただ、本人は「先輩の足元にも及ばない」と謙遜ぎみ。プログラミング関連の本を買って自宅で勉強する努力家である。

3人の中で最も経験年数が長いのが 2014年に入社した神宮さんだ。実は神宮さんは、長崎大学工学部在学中から C&Gシステムズに入社する直前まで、学生アルバイトとして同社で働いた経験をもつ。大学では機械工学を中心に学んだため、特にプログラミングに詳しいわけではなかったが、能力を見込まれて同社の一員となった。「社員として働き始めると一気に仕事の難易度が上がって楽しくなった」と神宮さん。入社後は CAM エンジン開発課で3年間働いた後、現在のソリューション開発課に異動。このときも、「どうしても必要な人材」(同社)と“引き抜き”に近い形での異動だったという。

CAM-TOOL は、金型特有の加工事情を踏まえた各種の機能により、プラスチック金型やダイカスト金型を高効率で品質良く加工できる

プレッシャーとの戦い

「優秀なメンバーが揃っている」(鎌田さん)という CAM 開発部だが、その業務はハードだ。仕事の難しさもさることながら、定められた期限までに開発を終えなければならないというプレッシャーと常に戦っているためだ。

同社の製品である CAD/CAM は、ユーザーニーズに合わせた新機能や改善を盛り込むバージョンアップを年に 1 度行っている。商品企画部門と開発部門が「どんな機能を盛り込むか、どんな改善を加えるか」を検討し、CAM-TOOL の場合、毎年、年初に開発内容を決めていく。誰がどの開発テーマを担当するかを割り振ったら、残りの期間で年末に向けてそれぞれのエンジニアが担当テーマに取り組む。年が明けると完成した機能を社内で検証し、問題がなければ正式に4月の新バージョンに機能が追加されるという流れだ。これが毎年繰り返される。

開発に携わるエンジニアは、4月のバージョンアップに間に合うよう、スケジュールを管理しながら日々の業務をこなしている。だが、開発の途中で行き詰まったり、社内での検証期間中に不具合が見つかったりと、常に順調に進むわけではない。「煮詰まってしまうと、本当に大変」と小林さん。仲間に助言を求めれば、もちろん親身になって考えてくれ、アイデアを出してくれる。それでも、完成まで導くのはそれぞれのエンジニア。期限に間に合わないと会社が判断すれば、新バージョンに機能を追加できないケースも出てくる。

神宮さんは CAMエンジン開発課時代、予定していた改善項目を 50%くらいしか完成させられないまま、開発期限を迎えてしまった経験がある。そのとき取り組んでいたのは制御点を揃えて加工品質を高める、同社内で「構造点再配置」機能と呼ぶもので、一部の形状には適用できたものの、ほかの形状への応用展開がスムーズにいかなかった。同機能は後のバージョンアップで 100%の完成度にすることができたが、「機能として半分くらいしか改善できていないのに期限は迫ってくる。当時は精神的にかなりきつかった」と振り返る。

鎌田さんも開発期限に間に合わず、もともと予定していなかったバージョンでリリースさせてしまった経験がある。入社 2年目で、「2.5 軸制御加工」向けエンジンのリニューアルを任されていた。壁にぶつかった最大の理由は、CAM-TOOL 自体が長い歴史をもち、簡単に変更できない部分があったこと。ソースコード(プログラミング言語で書かれたコンピュータへの指令)の中には、すでに作成者が退社していて、手を入れるのが困難な部分があった。取扱説明書に類するものが存在するケースは少なく、ソースコードから理解しなくてはならない。そうした状況でも、「入社 2年目で大きな失敗はできない」と踏ん張り、正式なバージョンアップには間に合わなかったものの結果を出した。仲間のサポートにも助けられたという。

メンバー同士が気軽に話し合える、「話しかけやすい職場の雰囲気」を大事にしている

使いやすさをさらに追求

現在 3人は、2021年4月の新バージョンのリリースに向けた開発業務が佳境を迎えている。入社 2年目の小林さんが担当するのは、CAD でつくった曲面をポリゴンに変換する機能の改善だ。ポリゴンはツールパスの計算やシミュレーションを行う際に使われる重要なデータ。もとの形状に近いポリゴンにできれば、よりきれいなツールパスの作成につながる。中でもポリゴン変換時にユーザーの意図しない隙間ができて「演算エラー」となるケースをなくそうと試行錯誤を繰り返した。「自分の変更点でどこが変わったか、一目でわかるのがポリゴンのおもしろいところ」(小林さん)。意欲的に取り組んだ結果、完成が見えてきた。

鎌田さんは 2.5軸制御向けエンジンの改善を担当しながら、並行してツールパスの計算範囲を決める「領域線」処理の改善に取り組んでいる。領域線を滑らかに、より早く求められるようにするのが目標。オペレーターの作業負担の軽減につながる機能なので、できるだけ完成度を高めたいと考えている。

神宮さんは今期、CAM の機能改善から少し離れて、新しい発想で UI の開発を行った。自分の考える「ソフトとしての使いやすさ」に、「こうした方が使いやすい」というユーザーや同僚の意見を取り入れ、社内で検討を重ねた。同社の製品を知らない海外の顧客や新規顧客にもアピールできる UI を考案し、CAM-TOOL に実装するのが最終的な目標だ。

3人の担当する開発業務は、年に 1 度のバージョンアップに向けて進んでいく。したがって、課題をクリアして無事にリリースされたときは感慨深いという。加えて神宮さんは、「ほかの部署のスタッフに新しいものを見せて、『これいいね! 』と言ってもらえるのもうれしい」と話す。ささいなことだが、長丁場の開発業務では同僚の一言がモチベーションを左右することもある。課長である鎌田さんも「話しかけやすい職場の雰囲気づくり」を重視。新型コロナウイルスの感染拡大を機に、ビジネスチャットツールの「Slack」や Web 会議「MicrosoftTeams」を積極的に取り入れるなどコミュニケーションを円滑にする工夫を続けている。

スキルアップにも注力

ソフト開発は技術の進化のスピードが速く、携わるエンジニアには不断のスキルアップが求められる。そこで CAM 開発部では、若手のみ参加する勉強会を開催している。ベテランに引っ張られるのではなく、自主的に学ぶ姿勢を培ってほしいとの願いからだ。CAM エンジン開発課では、鎌田さんが主導して不定期だが週に 1 度の割合で開催。経験の長い神宮さんに講師を依頼することもある。また、同社が 2008 年に東京都大田区に開設した「加工技術センター」を活用して加工の理解を深めることで、より顧客の立場に立った開発も目指している。

今後の目標について、最年少の小林さんは「一日も早く先輩方に追いつきたい」と話す。ポリゴンだけでなく、ツールパスの知識もどんどん吸収したいと考えている。神宮さんは、スマートフォンのアプリのような「他分野の良いソフトからどんどん学び、取り入れていける技術者」を目標に掲げる。鎌田さんの目標は、「皆が働きやすい環境を整えること」。一人ひとりの能力を十分に引き出せる環境をつくることで、開発力の底上げを図る考えだ。

3人に共通するのは、「より良い CAMを開発したい」という想い。「簡単に、高精度な NCデータを作成したい」という CAMユーザーの声に応える製品を、これからも世に送り出していく。

会社概要
所在地:東京都品川区東品川 2-2-24(東京本社)
    北九州市八幡西区引野 1-5-15(北九州本社)
電話番号:03-6864-0777
代表取締役社長:塩田聖一
資 本 金:5 億円
設 立:2007年
従業員数:249人(グループ連結)
事業内容:金型用 CAD/CAM システム、生産管理システムなどの開発、販売、サポート

雑誌紹介
雑誌名:型技術 2021年2月号
判型:B5判
税込み価格:1,540円

販売サイトURL
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日刊工業新聞ブックストア
内容紹介
型技術 2021年2月号  Vol.36 No.2

【特集】金型加工向け工作機械の最新トレンド

コロナ禍で2020年の日本国際工作機械見本市(JIMTOF)はオンライン開催(オンラインJIMTOF)となりました。リアルな展示・商談の場がなくなったとはいえ、工作機械の技術開発が滞ることはありません。微細、高精度な金型を製造するうえで高性能な工作機械の重要性はさらに増していると言えます。
 本特集では、金型加工の高度化を目的とする工作機械メーカーの技術開発動向や新製品のコンセプト・機能、効果などを紹介します。

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