ワクチン接種迫る!超低温冷凍庫やドライアイスの確保は大丈夫?

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1月に川崎市で行われた新型コロナワクチン接種会場運営訓練
ワクチンを保管するための超低温冷凍庫

日本国内で米ファイザー製の新型コロナウイルスワクチンの接種開始が迫る中、政府や自治体による急ピッチな準備が進む。短期間で多くの国民に行き渡らせる前例のない取り組みには輸送・保管体制の確立がカギを握る。本格的な動きへ手探りの状況が続くが、体制構築はサプライチェーン(供給網)安定化やレジリエンス(災害対応力)などの観点からも試される。ワクチン接種で注目が集まる超低温冷凍庫やドライアイスの確保をめぐる動きを通じ、不測の事態における対応の在り方を探った。(高田圭介)

【調達専門部署】

政府は17日にもファイザー製ワクチンを医療従事者最大約2万人を対象に先行接種を始める。その後、約370万人の医療従事者に広げ、高齢者や基礎疾患を持つ人々、高齢者施設従事者などへ順次拡大する計画を立てている。

菅義偉首相は1月、河野太郎規制改革担当相をワクチン担当相に据えた。約3600万人が対象となる高齢者への接種だけでも、短期間での実施は前例のない取り組みとなる。内閣府や厚生労働省、経済産業省など省庁横断の課題をどう束ねるかが接種体制構築で重要な意味を持つ。

ファイザー製ワクチンの日本への供給が決まったことを受け、輸送・保管体制の確立に注目が集まっている。マイナス75度Cでの保管が必要なファイザー製ワクチンは、超低温冷凍庫や保冷箱に使用するドライアイスの確保が求められる。政府は超低温冷凍庫について、3月末までに3370台を医療機関などに配送する予定だ。

担当大臣を置いて取り組む背景には省庁をまたがる課題での指揮系統の明確化だけでなく、政府として昨春の経験を繰り返したくない狙いもある。日本国内での新型コロナ感染拡大に伴い、マスクや消毒液、医療用ガウンなど医療関連物資の供給不足に陥った。需要の急激な高まりや市場の混乱で対応に追われた政府は新たな製造ライン設置や増設などに対する補助事業を実施したが、供給安定化までには時間を要した。

過去の経験を踏まえ、超低温冷凍庫やドライアイスの確保にあたって、経産省は緊急時の物資調達に携わる専門部署を設けて厚労省との連携効率化を図っている。超低温冷凍庫はメーカー4社に増産を要請し、梶山弘志経産相は「当初予定しているものは目安がついている」としている。

一方でドライアイスの確保は超低温冷凍庫と少し事情が異なる。ワクチン保管用に使うドライアイスは表面積を増やして保冷効果を高めるため、ペレット状の製品の確保を進める。通常の形状と異なる上、ドライアイスは例年夏に需要が最盛期を迎える。保冷能力の違いもありドライアイスを用いた保冷庫での保管は、ワクチンの保存期間も踏まえて10―15日程で接種できるようにしなければならない。現場に供給されても有効期間を過ぎて使えない状況を防ぐため経産省と厚労省は夏を迎えるまでにファイザー製ワクチン用の超低温冷凍庫を1万台確保し、ドライアイスでの保管を減らす方針だ。

【運送3社選定】

ワクチン輸送について政府はヤマトホールディングス(HD)、セイノーHD、独DHLを選定して円滑な体制の確立を進めている。接種の広がりで全国約1700の地方自治体からのさまざまな声も予想され、経産省担当者は「オペレーションが重要になる」と語る。接種開始初期の混乱や地域ごとの供給体制の偏在などに対応するため、近隣地域でのワクチン融通をはじめとした対策に重点はシフトしつつある。

世界中でワクチン接種の動きが徐々に進む中、各国で試行錯誤の状況が続く。日本国内での円滑な供給体制の確立は、途上国をはじめ接種の見通しが立たない国々での応用展開につながる可能性もある。ワクチン接種をめぐる今後の政府や産業界の動きは、不測の事態が発生するたびに指摘されてきたサプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)性を乗り越える上で一つの試金石となるかもしれない。

日刊工業新聞2020年2月12日

キーワード
ワクチン

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