個別半導体もLSIも増産体制、ローム社長が狙う次のパワーデバイス
―半導体の需給が逼迫(ひっぱく)しています。
「非常に活況。需要が伸びており、少なくとも2021年4―9月期はこの状況が続くと思う。半導体や電子部品は昨夏から需要が回復。パソコン関連などの巣ごもり需要と車の生産回復で昨秋から活況となり、現在に至る。生産能力を超えた需要に対し、ディスクリート(個別)半導体もLSI(大規模集積回路)もキャパアップを急いでおり、増産体制に入っている」
―10年先を見据えた形で21年度からの5カ年計画を策定中です。
「パワーとアナログ技術で省エネルギー・小型化に貢献し、顧客課題、ひいては社会課題を解決する。全社視点で課題に応える基盤を構築し、5カ年の早い段階で過去最高の売上高を狙う。21年は海外を含む事業展開、経営体制見直し、生産体制革新を進める。海外売上高は現状、日系企業向けが中心。外資系との取引を飛躍的に伸ばすのが大方針で特に中国と欧州を重視する。欧州は車関係もあるが、産業機器関係も多く重要市場だ」
―車市場で脱炭素の動きが加速。異業種参入も相次ぎそうです。
「注力してきたパワーデバイスやアナログ製品は、省エネ・小型化の市場ニーズにマッチした製品だ。車社会がどのように変わっていくのか見極めつつ、商品ラインアップを作っていく。ハイブリッド車(HV)もしくは電気自動車(EV)が増えるのかは、各国の発電状況などで異なるが、基本は電装化が進み、自動運転技術も発展し、電動化が飛躍的に増えていくとみる」
―SiCパワーデバイス前工程の専用棟が筑後工場(福岡県筑後市)で完成しました。
「設備を順次入れ、自動化ラインで作り上げていく。将来の需要を見越した新棟だ。後工程の増強、ドイツでのSiC基板増産も推進。国内工場のLSIなどの増産も軌道に乗せていく。人材育成や技能伝承に力を入れ、女性活躍推進では中計に数値目標も盛り込んで取り組む」
*取材はオンラインで実施。写真は20年12月に撮影したものを使用
【記者の目/シェア3割へ対応着々】
ロームはEVや産業機器などで採用が進むSiCパワーデバイスのリーディングカンパニー。23年ごろのブレーク想定で、増産対応を着々と進める。SiCパワーデバイス市場は、25年に現在の4倍の年2000億円規模に伸長するとみており、同年にシェア3割(現在は約2割)の獲得を目標に掲げている。(京都・松中康雄)
【関連記事】 東芝が半導体2工場売却へ、台湾UMCと交渉