無人で少量多品種生産。ロームは「フレキシブルライン」でパンデミックに備える
ロームはパンデミック(世界的大流行)時でも供給責任を果たすため、一つの生産ラインで多品種の半導体パッケージを、人手に頼らずに製造できるフレキシブルラインを2021年にも各拠点に配備する。新型コロナウイルス感染拡大で、中国と東南アジアの複数工場は一時稼働停止を余儀なくされた。そのため同一品目を複数工場で扱い、有事に各地でバックアップする既存の事業継続計画(BCP)だけでは不十分と反省。外部との協業も加速しあらゆるリスクに備える。
ロームは、ロボットを駆使して金型や治具を自動交換し、サイズ、形状、端子が違う半導体パッケージを数千個単位から容易に少量多品種生産できる無人パイロットラインを開発中。加工中の設備状態を常時監視しゼロディフェクト(不良ゼロ)を実現するのも特徴だ。通常のラインは段取り替えに数日かかり、一度セッティングしたら切り替えず、長く使うのが一般的だ。
本社工場(京都市右京区)のパイロットラインを、年内に福岡県広川町の工場に移設した上で検証して作り込み、21年にも数十億円を投じて国内外の拠点に順次展開する考え。平常時は少量多品種が多い産業機械向けの生産を主に担う。
加えて半導体受託製造(ファウンドリー)や半導体後工程請負業(OSAT)など、外部への生産委託も加速する。同社は工場が水没した11年のタイ洪水をきっかけに外部との関係を深め、変化への対応力を高めてきた。19年度の生産委託割合は約10%。22年度までに同30%へ高める。
以前は10社ほどだったOSATとの取引は20社以上に増えた。1拠点のみでの生産をなくすため、小サイズのウエハーを扱い設備老朽化が進む国内工場のバックアップなどは、ライン移植できる海外ファウンドリーなどと交渉中。並行して今の国内体制も見直す。
これらフレキシブルライン導入や外部協業加速に、既存BCPを組み合わせることで、今回のコロナ禍のような移動制限や複数工場停止に見舞われても、供給責任を果たせる体制を整える。