トップから相次ぐ強気発言、電子部品の業績上振れのワケ
電子部品各社の業績が上振れている。自動車業界の生産回復を背景に、電子部品大手はそろって2020年度上期の業績が期初予想を上回って着地している。新型コロナウイルスのリスクが今なお世界を覆い、再び行動制限に踏み切る地域も出てきたが、トップからは強気発言が相次ぐ。
「通期はかなりの増収になる。第2波、第3波が来ても、4月の混乱期を経てどうすれば良いのか理解しており、対応策はできている」と日本電産の永守重信会長は自信を見せる。永守会長はコロナ禍で技術革新が起きているとし、「変化に迅速対応できる企業が生き残る」と指摘。成長見込む電気自動車(EV)用駆動モーターへの投資を加速し、30年に同モーターの世界シェア45%を占有するプランを明らかにした。
車載部品の需要はガソリン車、ハイブリッド車(HV)、EV向けなどを問わず、7月頃から総じて回復基調だ。
ロームの松本功社長は「自動車関係の引き合いが強い。足元の受注は非常に堅調」と、表情は明るい。京セラの谷本秀夫社長も自動車市場の回復の早さに幾度も触れ「部品需要は下期に100%近くまで戻りそうだ」という。自動運転や先進運転支援システム(ADAS)関連の車載カメラやセンサーなどへ積極投資を行う考えだ。
TDKの石黒成直社長は「車部品関連メーカーからの需要が急速に戻ってきた。今後の需要拡大を予想し、在庫の確保を行っているのではないか」と、現状を分析する。
車向け以外では工場自動化(FA)機器などの産業機械向け部品は、工場投資が活況になるまで厳しい状況が続く。ただ半導体製造装置向け部品は好調。テレワークや巣ごもり普及でパソコン、スマートフォンなどの需要増加も明るい材料だ。
村田製作所の村田恒夫会長は車やパソコンに加え、第5世代通信(5G)スマホの生産が増え、部品需要が増加したと明かす。
一方、5G基地局は東京五輪・パラリンピックなど国際イベントの延期、各地での中国企業製基地局の導入見送り、中国企業以外の開発遅れで当初見込みよりも立ち上がりが遅れ、部品需要も弱含んでいるという。
もっとも各社の業績回復は需要回復に加えて、生産性向上やコスト削減など、徹底した改善に迅速に取り組んだ結果でもある。この裏打ちあってこその強気発言ともいえる。