カーナビの強みをコネクテッドやシェアリングに!アイシン精機の勝算
物流ソリューション提案
アイシン精機は車両に関するデータを活用した事業の拡大にアクセルを踏む。2020年4月に発足した「CSSカンパニー」では、カーナビゲーションシステムで培った位置情報などの強みを生かし、コネクテッドやシェアリング領域のサービス開発に力を入れる。次世代の成長に欠かせない事業領域にどう取り組むのか。プレジデントを務める鈴木研司執行役員に展望などを聞いた。
―CSSカンパニー設置によるこれまでの手応えは。
「アイシン・エィ・ダブリュ(AW)のVIT事業本部で主にカーナビを手がけていたが、思い切ってコトを事業化する。お客さまにモノを出すだけでなく、さまざまな方々と手を組んでいけるのが良かった。アイシングループで持つセンサーなどのノウハウと、位置情報を連携させると面白いことができる。非常に多くのサービスが考えられる」
―物流向けソリューションも期待される分野の一つです。
「物流は宅配業界だけでなく、社会でも大きな課題だ。BツーC、BツーBのどちらにもソリューションを提案し、困りごとを解決したい。その根幹には駐車場の位置まで案内できるアイシングループの位置情報の技術がある。物流だけでなく現場に即した社会課題を解決するために、位置情報はより価値を持つだろう」
―乗り合い送迎サービス「チョイソコ」の運行エリアも拡大しています。
「20カ所ほどで提携が始まる予定だ。自治体に加え販売店向けにプラットフォームを提供し、チョイソコに類するサービスを展開するモデルもある。愛知県岡崎市で実施している子育て支援のように地域課題の解決に資する取り組みも進めている。車が走ればデータが取れるプラットフォームの拡張性があり、スピード感を持って広げたい」
―アイシンAWとの統合新会社「アイシン」が21年4月に始動します。どのような相乗効果を期待していますか。
「アイシングループではパワートレーンやブレーキ、カーナビを含めた位置情報などまで全部まとめて提案できる。さらなるシナジーを狙いたい。また自動運転は幅広い技術が必要になる。高精度地図の取り扱いなど自動運転に資する位置情報を提供し、自動車メーカーの自動運転技術に貢献したい」
―CSSカンパニーの体制はどう強化しますか。
「人員を増やすより、外部と組んだりベンチャーに出資したりするやり方がある。持続可能な会社になるにはコネクテッドやシェアリング、デジタル変革(DX)は最も重要な位置付けだ。100年に1度の変革期に対応するための中核技術と捉えている」
【記者の目/次世代成長へ施策効率化】
CSSカンパニーが目指すソリューションは多くの課題を抱えている自治体や物流業界などで期待される領域だ。アイシングループは幅広い自動車部品の知見から多様なサービスが展開できるだろう。鈴木プレジデントは最高デジタル責任者(CDO)も兼任する。自身でも「共通部分は多い」と言うように、次世代の成長に向けた施策を効率的に打てる利点がある。(名古屋・山岸渉)