日鍛バルブが40億円を投じ中国でエンジンバルブを増産するワケ
日鍛バルブは中国で乗用車の燃費性能向上に貢献するエンジンバルブの生産を拡大する。2021年度までに約40億円を投じ、月産能力100万―120万本体制を構築する。生産を順次拡大し、増販を計画する日系自動車メーカーの現地ニーズに対応する。同国では環境規制を強化する動きが加速する。ハイブリッド車(HV)を含め燃費性能に優れたエンジンの需要は根強く、現地化により環境需要を取り込む。
生産するのはバルブの軸と傘部に空洞をつくり、金属ナトリウムを封入した製品「傘中空エンジンバルブ」。空洞がない通常のエンジンバルブと比べ軽量化が可能で、ナトリウムによる冷却効果にも優れる。通常のバルブと比べエンジンの燃費性能の最大1%向上に貢献できる。
中国・山東省日照市の合弁会社で20年度に傘中空エンジンバルブの量産を本格化した。既に3ラインを導入し、順次生産を拡大する。21年度中に1ラインを増設し、月産能力を現状比30%増への引き上げも計画する。
これまで中国で販売する傘中空エンジンバルブは山陽工場(山口県山陽小野田市)から輸出していた。しかし日系自動車メーカーの好調な中国販売などを受け生産が逼迫(ひっぱく)しており、需要の増加分を日照市の合弁会社で対応することにした。
中国は35年までに新車の50%を電気自動車(EV)などの新エネルギー車とし、残り50%をエンジン駆動のみの車から、HVなど電動車への切り替えを検討している。ただ30年までHVやプラグインハイブリッド車(PHV)を含めたエンジン搭載車の販売は増加傾向との試算もある。足元の需要に対応しつつ、燃費性能向上など付加価値を高めたバルブの拡販を目指す。
日刊工業新聞2021年1月13日