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デジタル・自動化ニーズを取り込むABB、次の「コト売り」戦略を日本法人社長に聞く

デジタル・自動化需要拡大

スイスの重電メーカーABB(チューリヒ)は、電気自動車(EV)インフラや制御システム、モーター、ロボットなど幅広く事業を展開する。デジタル化や自動化ニーズを取り込みながら「コト売り」を加速する。日本法人(東京都品川区)でロボット事業を統括し、2020年9月に就任した中島秀一郎社長に戦略を聞いた。

―ロボット需要が増加しています。

「自動車や3品(食品、医薬品、化粧品)向けのほか、研究所や流通からも需要がある。稼働をシミュレーションする『ロボットスタジオ』を提供し、設備構築を支援している」

―各社協働ロボットに力を入れています。

「双腕型協働ロボット『YuMi(ユーミィ)』では新しい取り組みを始める。提供開始から5年経過し、ギアを1段階上げる。多関節ロボだけでなく協働ロボもメーンとなる。専用機や人を介在しながら製品製造に合致した工程を実現する。強みのアプリケーション(応用ソフト)やソリューションで差別化する」

―新型コロナウイルス感染症の影響は。

「グローバルでは影響は少ない。日本でも事業は好調で着実な成長を実現する。産業全体でデジタル活用やEV移行、自動化が進む。エレクトリフィケーション事業ではデータセンター向けの無停電電源装置(UPS)やEVチャージャーの需要増が続く。当社のシステムやサービスが必要とされている」

―モーションやインダストリアル・オートメーション事業は。

「モーション事業では機械メーカー向けにモーターやドライブが好調。コロナで移動が制限される中でもウェビナーで認知度を上げた。インダストリアル・オートメーション事業では石炭火力の需要が減少しているため新規分野を開拓する。再生可能エネルギーを含む複数種類の発電ユニット、需要家、蓄電設備を束ねて最適な運転計画を立てるソリューション『OPTIMAX』の販売を進めている」

―中長期の戦略は。

「産業構造が変わり、提供するシステムやサービスが世のニーズに合致している。千載一遇のチャンスで存在感を高める」

ABB日本法人社長・中島秀一郎氏
※取材はオンラインで実施。写真はABB日本法人提供
【記者の目/ハード・ソフトともに充実】 モーション事業はパートナーとの連携を拡大するほか、エレクトリフィケーション事業でもサービス提供を強化。インダストリアル・オートメーション事業も検知システム基盤を展開する。ロボットではアフターサービスに力を入れる。ハードだけでなくソフトを充実する戦略で、自動化やデジタル化を包括的に支援する。(川口拓洋)

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日刊工業新聞2020年1月8日

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