「金属」「建機」売却の行方は?日立社長が語った世界で戦うポートフォリオ戦略

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日立製作所社長・東原敏昭氏

英国の欧州連合(EU)離脱移行期間の31日終了を目前に、両者の通商交渉が合意に達した。日立製作所は、今やグローバル展開の顔となった鉄道事業の主力工場を英国、EU双方に持つだけに、この合意を歓迎。サプライチェーン(供給網)の股裂きはどうにか免れた。ただ2021年も新型コロナウイルスや米中対立など不安定要素は多い。社長の東原敏昭氏に今後の経営方針を聞いた。

―英国とEUが通商交渉で合意しました。これで関税ゼロが維持されます。

「非常にうれしいサプライズだ。イタリアと英国に鉄道事業の工場があり、もし関税が復活すると、部品の組み立て場所に神経をとがらせて、内製化も考えないといけない。その心配が要らなくなった。合意によって、どちらの国で部品を調達して組み立ててもいい。ただ、以前から関税がかかるリスクを想定し、見積もりに(関税によるコストアップの可能性を)入れるなどの対策は講じてきた」

―一方で新型コロナウイルス感染拡大の影響は残りそうです。

「今の新型コロナの状況が少なくとも半年間、ワクチンが完全に行き渡るまで、悪ければ1年間続くと覚悟しないといけない。ただ、20年に得たコロナ対応力が継続するので、経営上の影響は大きくない。20年度は売上高営業利益率5%、当期利益3000億円を見込むが、21年度はそれ以上の成果を当然上げて、当初目標の2ケタ利益率に向かっていきたい」

―海外の白物家電事業を分離して、トルコ・アルチェリクとの合弁に切り替えます。

「家電に限らず海外事業で合弁会社をつくることに皆さん否定的だが、私は全く否定的ではない。世界で戦う形をどう構築するかが重要で、出資比率がマイノリティーでも一向に構わない。売上高や営業利益に入ってこないが、大事なのは当期利益だ。今は3000億円だが、21年度以降に4000億円、5000億円と伸びていく様子を見てほしい」

―残る上場子会社の日立金属と日立建機の株式売却について、現在の検討状況はいかがですか。

「将来に向けて世界と戦える形をつくるため、日立グループにいた方がメリットがあるなら残ればいいし、旧日立化成のように別の会社と組んだ方がいいならば日立は考えると言っている。私は上場会社が成長するのに1番良い方法をサポートしたい」

【記者の目/ABB事業買収の成否カギ】 海外家電事業の合弁化や上場子会社の株式売却、そして当期利益重視への転換も、根強かった自前主義からの脱却の一環だ。その一方で、世界と戦うには自力だけでは不十分と悟り、20年7月のスイス・ABBからの送配電事業買収で大きな賭けに出た。“世界の日立”になれるかどうか。賭けの成否がカギを握る。(編集委員・鈴木岳志)

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日刊工業新聞2020年12月28日

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