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10年前レノボに“買われた”NECPC。それでも倒れない強さの根源

倒れない力 #6 NECパーソナルコンピュータ 執行役員常務 中土井一光

NECが国内パソコン事業(現NECパーソナルコンピュータ<NECPC>)で中国レノボ・グループと合弁会社を立ち上げてから10年。その間、NEC レノボ・ジャパングループは約25%の国内シェアで連続トップを維持する。NECPCは製造・保守の現場を支え、グループ内で存在感を高めている。この10年で同社はどう強くなったのか。主要拠点の一つである群馬事業場(群馬県太田市)を率いてきた中土井一光執行役員常務に話を聞いた。(昆梓紗)

―1990年代初頭までパソコン国内シェア50%超だったNECですが、2011年には約18%に縮小。群馬事業場もPC需要落ち込みの影響を受け続けてきました。
 2002年に開発からサポート拠点になり、11年にレノボとの合弁会社が設立。大きな転換が続き、従業員も減った。合弁設立当時、食堂が閑散としていたことが個人的には一番こたえた。

―合弁設立後、まず取り組んだことは。
 すべての部門で一人の責任者がNECとレノボの両ブランドを見ることにし、比較して改善すべき点を整理した。例えば、バッグヤードやアウトソースを棚卸しして共通化し、1年で数100万ドル(数億円)の効果を出した。当社はいわば買われた立場だが、そういった背景は関係なく責任者を選出し、公平な立場で議論できたことが大きい。

―NECPC側も積極的にシナジー創出に動いたのですね。
 それ以前から強い危機感を持っていたので、レノボを利用しようという気持ちで臨んだ。レノボの徹底した費用管理など良い面を学んだ。逆にNECは「顧客満足度No.1」や改善サイクルの速さを強みとしてきた。異なる特徴を持つ2社が一丸となり効果を出した。お互いが「1+1を2以上にしよう」という意識でなければ生き残れなかっただろう。

―2016年にレノボの修理を取り込んだことが大きな転機となりました。
 それまで他社が行っていたのだが、取り込まなければ将来はないと思った。NECPCの管理システムの応用、ナレッジの共有、コスト削減などに徹底的に取り組んだ。スタートして1年後には修理時間は約半分に、再修理率は40%改善。2020年には1日で修理を完了する割合が95%まで達した。修理取扱量が1.6倍になったことで従業員も増え、賑わいを取り戻した食堂を見て胸が熱くなった。

―群馬事業場の強さをさらに伸ばすためには。
 日本だけでなく、グローバルでの成果に貢献する。中国のレノボ拠点に送って修理する部品について、こちらから情報提供を粘り強く行った結果、良品比率が60%改善した。日本のサービスチームが世界に貢献できれば、存在感が増し、重要拠点とみなされる。
 また修理だけでなくサービスにも注力し、「サービスマザーサイト」としての位置を確立する。レノボ製品で(予め顧客仕様にカスタマイズして出荷する)キッティングサービスを近く開始する。今後も積極的に新たな仕事を取り込んでいきたい。

1985年、NEC入社。PC部門に配属。生産、資材、開発、品質部門を経て、2011年よりNECPCに転籍。以降サービス部門責任者。2017年より現職。
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
「レノボ社長にLose togetherと言われたのが嬉しかった。Win togetherは言えても、Loseはなかなか言えない」―中土井さんのインタビューでこぼれた、印象的な言葉です。いいときだけでなく、辛いときも共に、同じ方を向いて進んできたレノボとNECPCの関係性をよく表していると思いました。

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