NEC新社長の森田CFOはどんな人?「予算はきちんと使い切ることが必須」
NECは2021年4月1日付で新野隆社長(66)が代表権を持つ副会長に就き、森田隆之副社長(60)が社長に昇格する人事を発表した。5年ぶりの社長交代。同日開いた取締役会で決定した。森田次期社長は海外事業やM&A(合併・買収)で豊富な経験を持ち、18年からは最高財務責任者(CFO)として辣腕(らつわん)を振るってきた。21年4月から始動する5カ年中期経営計画の始動に合わせトップ交代し、成長戦略を指揮する。
新体制で遠藤信博取締役会長(67)は変わらない。代表権を持つのは副会長となる新野氏と、森田次期社長の2人で変わらず、しばらく実質的には現行体制を踏襲する。
森田次期社長は16年に最高グローバル責任者(CGO)として海外事業を統括。18年から代表権を持つ副社長兼CFOとなり、新野体制を支えてきた。
M&Aのキーマンでもあり、関わってきた案件は半導体やパソコン、プラズマディスプレー(PDP)、液晶パネル、NECトーキン、携帯電話など。NECが行った合弁会社の設立や事業売却のほとんどすべてに関与。手がけた案件の7割は「売りと合弁」(森田氏)だった。
30日の会見で新野社長は森田次期社長について「論理的でスピーディー。実行力や戦略性などにもたけていて(次期トップに)最もふさわしい人物だ」と評価。森田次期社長は「グローバル・ファイナンスとグローバル・ガバメント、第5世代通信(5G)などの成長領域で革新をリードしたい」と抱負を述べた。
【略歴】森田隆之氏 83年(昭58)東大法卒、同年NEC入社。06年執行役員、11年執行役員常務、16年取締役執行役員常務、18年副社長。大阪府出身。
■素顔/NEC社長に就任する森田隆之(もりた・たかゆき)氏
何事に対しても妥協せず、全力を尽くす人。特に仕事には厳しく、中途半端や曖昧さを許さない。頭角を現したのは2000年前半。海外でM&A(合併・買収)案件を手がけた実績を買われ、02年に事業開発部長に抜てき。その後、ITバブルの処理もあり、「“売り方”をずっとやっていた」と苦笑する。
18年に副社長兼最高財務責任者(CFO)となり、公約したのは「長期利益の最大化」。この言葉には森田氏の経営哲学が凝集されている。社内には「短期利益を最大化しようとすると、長期利益を損なうことがある」と言及。「R&Dなどを削って予算を達成しても褒められない。予算はきちんと使い切ることが必須だ」と、哲学を浸透させてきた。
現行の中計達成でも、経営哲学はぶれず、陣頭指揮を執る新中計に向けてまい進する。「当社の根源的な強みを競争力の源泉にして、勝つべきところで、きちんと勝つ」と語る。(編集委員・斎藤実)