日本通信社長「販売店と一体となり、いかに販売コストを下げるか」MVNOの生存戦略
音声定額で法人顧客も獲得
「MVNOの代表としてドコモに対抗します」―。仮想移動体通信事業者(MVNO)専業の日本通信は、NTTドコモが2021年3月に投入予定の新プラン「アハモ」への対抗プランを10日に始めた。携帯通信大手の料金引き下げ攻防が当面続くとみられる中、日本通信の戦略や市場動向を福田尚久社長に聞いた。
―新プラン投入の経緯は。
「ドコモが無料通話をつけるか分からなかったため、当初は(事前に報道されていた)アハモと同じ月間データ通信量20ギガバイト(ギガは10億)、月額2980円で検討していた。だが、アハモが5分以内の国内通話を無料とすることを発表前日に知り、同じ内容では意味がないと1000円引き下げた。収支計算の上、十分利益が出ると判断した」
―総務省は、MVNOが携帯大手に支払うデータ接続料を3年間で5割低減するとしています。今後、何が可能になりますか。
「データ接続料は年々下がっており、21年4月には2割下がる見込み。そのため、アハモが始まる同3月には現行の16ギガバイトから20ギガバイトに引き上げても問題ないと考えた。だが、現状では真に公平とは言えず、携帯大手のような使い放題プランは無理。5割下がれば50ギガ―60ギガバイトの大容量でも勝負できるようになる」
―MVNOでは珍しい音声定額も提供しています。
「6月の総務大臣裁定でドコモに支払う音声卸料が8割下がったことで実現した。携帯大手の利用者の多くは音声定額に加入しており、移行してもらうには必要だった。現在は3ギガバイトのみだが、20ギガバイトプランでも導入する予定だ」
「通話の多い法人からも反響が大きく、現在は法人契約が回線数の15・8%を占める。(16年3月期以降)5期連続で営業赤字だったが、音声卸料の低廉化と、音声定額プランの契約積み上げにより、年度内にも月次単位では黒字化できる見通しだ」
―MVNOが生き残るには何が必要でしょうか。
「MVNOは国内に約1100社ある。携帯大手の料金戦略で淘汰(とうた)が進むのは間違いない。携帯大手より料金が安いにもかかわらず、大手MVNOを中心に、販売店に携帯大手と同水準の高額な販売奨励金を支払っているケースがある。もうからないのは当然だ。当社は販売店と一体となり、いかに販売コストを下げるかを追求している。生き残るには販売店とうまく付き合うことが不可欠だ」
【記者の目/独立系の手腕に注目】
日本通信はシェアこそ高くないが、MVNOの先駆者として新たなビジネスモデルを作ってきた。総務省の進める競争政策とは裏腹に、NTTによるドコモ完全子会社化や、ソフトバンクのLINEモバイル吸収合併などで携帯大手の影響力は一層高まるとみられる。独立系の日本通信がどれだけ存在感を高められるか注目される。(苦瓜朋子)