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失態続く「楽天モバイル」。それでも利用者は「満足」8割の理由

MMDLabo(東京都港区、吉本浩司社長、03・6451・4414)は21日、4月に自社回線を用いた携帯通信事業に参入した楽天モバイルの料金プラン「楽天UN―LIMIT(アンリミット)」の利用者実態調査をまとめた。6月末時点で同プランのシェアは2・1%にとどまったが、利用者の約8割が満足と回答した。データ通信無制限で月額2980円(消費税抜き)という安さが好評だったが、サポート対応の遅さや信頼性に不満を感じる意見も多かった。

スマートフォンを所有する18―69歳の男女2万6624人に契約している通信会社を複数回答で質問した結果、1位はNTTドコモで36・3%。以下、KDDI(au)の23・1%、ソフトバンクの15・8%、ワイモバイルの7・5%と続く。楽天モバイルは7・1%と5位だったが、このうち携帯大手から回線を借りる仮想移動体通信事業者(MVNO)の利用者が6割超を占めるため、自社回線を使う楽天アンリミット単体のシェアは2・1%とした。楽天モバイルは6月30日に楽天アンリミットの契約申込数が100万回線を突破したと発表している。

楽天アンリミット利用者500人を対象にどのように利用しているか聞いた結果、「メイン利用のスマホ」が67・8%、「サブ利用のスマホ」が28・8%、「モバイルルーター」が2・2%だった。

申込時期は5月以降が43%と最多。以下、4月8―30日の33・4%、サービス開始前の3月3日―4月7日の23・6%だった。契約した場所は「ウェブ」が77・2%と「店舗」の22・8%を大きく上回った。

利用端末は、シャープの「アクオスシリーズ」が27・5%でトップ。中国OPPO(オッポ)が17・8%、韓国サムスン電子の「ギャラクシーシリーズ」が15・7%。楽天モバイル独自のミニスマホ「楽天ミニ」は15・5%で4位だった。

各項目の満足度では、「料金プランの分かりやすさ」が91・8%、「コストパフォーマンス」が89・2%、「データ定額」が85・4%と高かった。

一方、「端末ラインアップ」が38・8%、「手続き・サポート対応の良さ」が37・2%、「サービスブランドの信頼性」が33・2%と満足度が低かった。

米アップルのiPhone(アイフォーン)に対応していないうえ、楽天ミニに誤った認証番号を表示して販売するなどで総務省から計5回の行政指導を受けたことが影響したとみられる。

日刊工業新聞2020年7月22日
志田義寧
志田義寧 Shida Yoshiyasu 北陸大学 教授
大手3社が協調的寡占市場を形成する中で新規参入した楽天モバイル。総務省から5回の行政指導を受けるなど失態が続いているが、個人的には価格競争をリードする存在として期待したい。総務省の一連の政策に対しては批判もあるが、通信料金と端末代金を分離するとともに、プレーヤーを3社から4社に増やすことは、競争を促進するうえで間違った政策であるとは思えない。端末市場は大手3社による購入補助で価格メカニズムが働かなくなり、健全な競争が阻害されていた。その補助の原資は通信料金から出ていたわけで、まずはそこを分離し、通信は通信、端末は端末で競争させるというのは理にかなっていると言える。一連の政策では、端末代金が高くなり、顧客の流動性も低下したという批判が目立った。しかし、米アップルが新型iPhoneSEを投入したように、売れなくなれば工夫する。それが健全な市場の姿だ。楽天のネットワーク整備が進めば、競争も徐々に進むだろう。

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