ホンダがインドに技研所員出向、現地の2輪ニーズきめ細かく吸い上げ
ホンダはインドの2輪車事業を強化するため、新たな開発体制を構築した。現地法人に研究開発子会社である本田技術研究所のメンバーを出向させ、現地のニーズを迅速に反映する開発体制に改めた。インド農村部を中心に普及する低価格モデルのシェア拡大を狙う。開発を効率化してコストを削減し、競争力を強化することで世界最大の2輪市場であるインドを深耕する。(松崎裕)
「2輪において最後の市場とされるインド。地場のメーカーと戦うために、コストとスピードが劣っていては勝ち残れない」。ホンダの安部典明常務執行役員二輪事業本部長は11日に開いたメディア向けの説明会で、インド市場攻略のポイントを強調した。
インドは年間約1400万台の2輪市場規模で世界最大。今後の人口増加や国内総生産(GDP)の成長などが続き、販売の伸びが期待される。ただ足元で4月から排出ガス規制「バーラト・ステージ(BS)6」を施行し、環境規制を強化。さらに新型コロナウイルス感染症問題も重なり2輪販売は落ち込む。
インドは地域によってユーザーの色合いが異なる。経済的に恵まれ多様化が進む西・南部は都市部のマーケットが中心。女性の社会進出も進み、ギアやクラッチ操作が不要で家族で使える便利なスクーターが伸長する。ホンダは同市場を取り込み、スクーター(SC)で55%の高いシェアを獲得する。
一方、北・東・中部の農村部ではユーザーは男性が中心。ギアやクラッチで操作し、排気量230cc以下の小型モーターサイクル(LMC)の低価格のモデルが好まれる。ホンダは現地のインドや中国などメーカーに押され、LMCのシェアは11%程と苦戦する。
ホンダは昨年4月、二輪事業本部と本田技術研究所の2輪の研究開発機能を統合するなど意思決定のスピードを高め、無駄のない商品開発を進めている。さらにインド市場でも農村部のテコ入れのため7月に現地組織を再編。本田技術研究所のメンバーをインドの現地法人に出向させるなどの組織づくりを進め開発体制を強化した。
開発、調達、生産までインドの現地で完結できるようにする。現地要件を反映した仕様や図面を作成し、さらにコスト削減につなげる。ホンダの三原大樹二輪事業企画部長は「組織変更により現地の最適化を加速させる。インドの農村部を攻める最廉価モーターサイクルの開発に着手した」と強調する。現地のニーズにあった排気量100―125ccの低価格帯の2輪モデルの市場投入を強化し、シェア拡大につなげる考え。さらに経済成長とともに中間所得層が増え、より排気量の大きい中間排気量帯(MidMC)の需要拡大にも対応し、インド市場でのシェア拡大を目指す。