「薄型テレビ」「ドラム式」...巣ごもり×10万円給付が下支えした家電市場
2020年は在宅時間の充実を望む消費者の意識が家電製品の購入・買い替えを後押しした。先行きが不透明な状況が続いたとはいえ、市場をけん引する高付加価値製品に対する引き合いも大きくは落ち込まず、むしろ外出機会の減少が高機能な高単価製品の出荷増加につながっている。
日本電機工業会(JEMA)の統計によると、白物家電の1―10月の国内出荷額は前年同期比1・6%減の約2兆855億円。電子情報技術産業協会(JEITA)がまとめた同期間の黒物家電の国内出荷額は、同4%減の1兆426億円。いずれも上期にコロナ禍のマイナス影響を受けたが、継続する“巣ごもり消費”で前年の水準に近づいてきた。
巣ごもり消費の恩恵が目立つ製品が薄型テレビ。大型はもともと更新需要で堅調に推移してきたが、政府による1人当たり一律10万円の特別定額給付金の支給を受けて出荷が拡大。低調に推移していた小型も個人利用のニーズが高まり、29型は7、8月に出荷台数が前年同月を上回った。
白物家電でも、高付加価値製品であるドラム式洗濯乾燥機の出荷額は4―9月で増加。大容量の冷蔵庫は微減にとどまった。家事の時間・手間の削減に対するニーズはコロナ禍でも底堅く、むしろ在宅時間の増加がこれらの需要につながっている側面もある。
調理家電も巣ごもり消費で出荷が大幅に増えたが、ビックカメラの担当者は「価格帯を問わず全体的に販売が底上げされた印象」と振り返る。一方で、20年は電気・自動調理鍋や高機能なオーブンレンジなど便利な高単価製品が、料理の負担軽減を目的に販売台数を伸ばす傾向も見られた。
調理家電はエアコンなどと比べると比較的単価が低い品目だが、高機能化や機器同士の連携など進化の余地はまだ多い。杉山武史三菱電機社長は「家事の時短・負荷軽減のニーズは今後さらに加速する」と見通しており、調理家電の高付加価値化を後押しすることになりそうだ。