テレワーク需要、巣ごもり需要…コロナ禍で好調だった業種を解説!

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EC関連の荷物が大幅に増え好業績に

変革へのニーズ取り込み

2020年4―9月期の決算発表が大詰めを迎えている。新型コロナウイルスの感染拡大で多くの企業が影響を受ける中、“巣ごもり需要”やテレワークなど、ニューノーマル(新常態)に対応し好業績を収めた企業もある。感染の収束が見通せない中、全業種においてデジタル変革(DX)の加速が収益拡大のカギとなる。

宅配 個人宅向け荷物、急伸

ヤマトホールディングス(HD)とSGHDの宅配大手2社は新型コロナ感染症が広がる中、電子商取引(EC)荷物が大幅に増えて好業績となった。4―10月の宅配便取り扱い個数はヤマトHDが前年同期比14・1%増、SGHDが同5・0%増。緊急事態宣言下で生産活動が停滞したことにより企業間物流が低調に推移した一方、外出自粛や企業のテレワーク推奨などにより巣ごもり消費が拡大。個人宅向け荷物が伸びた。

21年3月期は感染収束が不透明な中でも、ともに前期を大きく上回りそうだ。両社は今後のEC市場の成長を見据え、宅配便インフラの能力増に取り組んできた。SGHDは大型中継施設を稼働させたばかり。川中子勝浩取締役は「(想定よりも荷物増が)少し前倒しになった」と話す。ヤマトHDは労働環境改善とDXを推進。芝崎健一副社長は「(データを分析・活用して意思決定を行う)データドリブンで受け入れる準備をしてきた」と万全の備えだ。

IT 生産性向上・DX加速

IT・情報サービス各社はニューノーマル需要の取り込みに力を注ぐ。コロナ禍では、テレワーク関連のインフラ整備に加え、生産性向上などの商談が増加。DXの流れを加速させる。

4―9月期ではニューノーマル需要として富士通は売上高529億円の積み上げ、NECは「営業利益で160億円を獲得した」(新野隆社長)。

コロナ禍で引き合いが増える体表温度測定システム(NEC)

コロナ禍でもテレワーク環境整備や働き方変革への投資は活発だ。伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)では、仮想デスクトップ環境構築の需要が高まったほか、SCSKではクラウド型ITサービスが好調で、「需要は継続する」(谷原徹社長)とみる。日本ユニシスでは人工知能(AI)を活用した小売店舗向け自動発注サービスが好調だった。

NTTデータでは「コロナ禍では金融・公共・企業が連動したサービスが加速する」(本間洋社長)と予測。下期以降もDX需要開拓に挑む方針だ。

自転車 感染リスク低い交通手段

新型コロナの感染拡大に伴い、自転車の需要が高まっている。手軽なレクリエーションやエクササイズに使えて、感染リスクも低い交通手段として自転車の利用が世界的に進んだためだ。自転車部品が主力のシマノは20年12月期業績の営業利益予想を7月公表値比135億円増の770億円(前期比13・2%増)に上方修正した。

特に欧州市場は自転車購入を促す補助金やインフラ整備政策などがサイクリングブームを後押しした。同市場は4―6月期に中価格帯自転車の部品を中心に販売が急速に回復。7―9月期は高級価格帯のロードバイク、マウンテンバイク向け部品の販売も増えた。北米・日本市場の販売も堅調に推移している。

食品 調味料・即席麺に人気

新型コロナ感染拡大による巣ごもり需要で、即席麺や調味料などのメーカーの業績が好調だ。即席麺では日清食品HDの4―9月期売上高が前年同期比8・9%増の2411億円、当期利益で同63・1%増の219億円と、いずれも4―9月期として過去最高。東洋水産も即席袋めんや生麺焼きそばなどが好調で、売上高で同2・6%増の2035億円、当期利益で同53・6%増の147億円と、売上高と全ての利益段階で過去最高となった。

調味料やパスタソースなども好調。カゴメの1―9月期の事業利益は同31・5%増の118億円と大幅増益。カゴメはトマトケチャップが同10%増、パスタソースが同20%増と売り上げを伸ばした。山口聡社長は「トマトケチャップは基礎調味料で汎用性が高い。2ケタの伸びは異例」と話す。同様に調味料などを手がけていても、業務用の比率が高い企業の決算は苦戦しており、家庭用の比率の高さが明暗を分けている格好だ。

家電 テレビに買い替え需要

当初こそコロナ禍の影響を受けたテレビや白物家電だが、巣ごもり消費の効果は大きい。ソニーの家電関連部門では買い替え需要も生じたテレビが好調。7―9月期の営業利益は前年同期比30・5%増と伸長した。

ソニーの4K液晶テレビ

パナソニックは冷蔵庫や洗濯機などが好調。家電事業部門の営業利益は4―6月期こそ前年同期比で減益だが、7―9月期は増益に転じた。梅田博和取締役は同セグメントについて「想定より早く回復した」と持ち直しを実感する。

シャープも冷蔵庫や洗濯機などの白物家電に加えて、空気清浄機などが好調に推移。家電や電子デバイスなどスマートライフ部門の7―9月期営業利益は同30・3%増と大幅に伸びた。野村勝明社長は「(下期は部門として)前年を上回る見通し」と期待する。

ただ感染再拡大への懸念は残る。サプライチェーン(供給網)への影響を警戒し、ソニーの十時裕樹副社長は「事業運営には緊張感を持っている」と話す。

ゲーム 定額制・ソフト販売順調

ゲームは巣ごもり需要の追い風を受け、任天堂やソニーの4―9月期決算はそろって好調、通期業績予想も上方修正した。

任天堂は家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」や同ゲーム機向けソフトウエア「あつまれ どうぶつの森」の販売が好調。同ソフトの大ヒットをきっかけに「ゲーム機購入に踏み切ったお客さまも多い」(古川俊太郎社長)と分析。20年度の販売台数目標を期初予想から500万台増の2400万台(前期比14・1%増)に引き上げた。

累計販売2604万本の大ヒットソフト「あつまれ どうぶつの森」(任天堂)

ソニーも人気ソフト「ゴースト・オブ・ツシマ」の好調や定額制サービスの利用者増加で、ゲーム部門で大幅な増収営業増益を達成。年末商戦に向け、12日には新型ゲーム機「プレイステーション(PS)5」を発売する。短期では「ハード単体では貢献というよりも、若干マイナスとなる」(十時裕樹副社長)見込み。人気タイトル投入やソフト数の増加で有料サービスの会員数増加につなげる。

上場企業の概況 4―9月期、業績上振れ基調

SMBC日興証券の調査によると、10日までに開示した東証1部上場企業1104社(開示率75.4%)の4―9月期の経常利益は前年同期比36.2%減、当期利益は同34.2%減。21年3月期見通しは経常利益で前期比27.4%減、当期利益で同27.7%減を見込んでいる。4―9月期は当初の見込みほど経済活動が停滞しなかったことを背景に企業業績は上振れ基調で推移。通期業績予想を上方修正する企業も多かった。SMBC日興証券株式調査部の安田光株式ストラテジストは「(今後再び)緊急事態宣言で物理的に経済活動を停滞させない限りは4―6月がボトム」とする。また全業種でコスト削減や不採算事業の見直しが進展。企業体質を変革する動きが目立った。安田氏は「コロナ禍で企業の業績に明暗が分かれている。今の状況に合った業態や製品を持つ企業は業績が良い」と指摘する。

日刊工業新聞2020年11月12日

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