ニュースイッチ

リコーが有機デバイスを高耐久化する技術を開発。 スプレー塗工のノウハウ活用

リコーが有機デバイスを高耐久化する技術を開発。 スプレー塗工のノウハウ活用

セラミック成膜した有機感光体。一般樹脂成膜と比べて強度を35倍に高めた

リコーは、有機感光体(OPC)などの有機デバイスをセラミックスで成膜する技術を開発した。常温でのセラミック成膜が可能な「エアロゾルデポジション(AD)法」を改良したほか、セラミックスの成膜前に塗布する中間層材料を開発。新技術の活用により、OPC成膜で主流とされる「一般樹脂成膜」と比べて、OPCの強度を35倍に高められる。OPCや太陽電池、有機EL、電子ペーパーといった有機デバイスの高耐久化につなげる。

有機デバイスは帯電性に優れる一方で、無機デバイスと比べて強度が弱いという弱点がある。そこでリコーは、無機材料であるセラミックスをデバイスに成膜する技術を開発。有機・無機デバイスの両方の特性を生かし、高耐久化を実現した。OPCの摩耗寿命を、一般樹脂成膜と比べて約4倍に伸ばせる。

新技術は、リコーがOPCの生産工程で培ったスプレー塗工のノウハウを活用。産業技術総合研究所が開発したAD法をベースに、OPCのドラム回転速度や塗工速度、粉末を噴射するノズルと成膜対象との距離などを最適化した。新技術の活用で、従来のAD法で課題となっていた塗布ムラを解消できる。

さらにリコーは、OPCの技術を活用し、デバイス薄膜中に電気を流せる「電荷輸送性」の高い中間層材料を新たに開発。AD法による成膜性を確保しつつ、半導体の特性を失わずに成膜できるようにした。

従来のAD法は塗工ムラや半導体特性の維持などがネックとなり、研究レベルでの活用にとどまっていた。新技術の開発で、今後工業用途でも有機デバイスのセラミック成膜が使用できる見込み。

リコーは、太陽電池や有機ELなど有機デバイスメーカーへのライセンス提供や共同開発を通じて、新技術の実用化を目指す。「nano tech2021 第20回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」に、同技術をオンライン出展する。

日刊工業新聞2020年12月2日

編集部のおすすめ