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住友ベークライトが鮮度保持フィルムを拡充、新設スタジオでコロナ禍の商談も対応

住友ベークライトが鮮度保持フィルムを拡充、新設スタジオでコロナ禍の商談も対応

P―プラスはカット野菜やキノコなどの青果物包装に幅広く使われている

住友ベークライトが「P―プラス」などの青果物鮮度保持フィルム事業を拡充している。オンライン商談や情報発信向けのスタジオを17日に開設。価格を抑えた製品も出し、攻勢をかける。BツーB(企業間)のメーカーながら、消費者にも親しみやすい仕掛け作りにも知恵を絞っている。(江上佑美子)

青果物は収穫後も呼吸を続け、栄養分を消費している。P―プラスはフィルムにミクロの孔加工を施して酸素の透過量を調整し、青果物の呼吸を抑える仕組み。青果物鮮度保持包装では国内トップシェアだ。

2020年はP―プラス発売から30周年。11年には、日本最大の青果物市場である大田市場(東京都大田区)前に、評価CSセンターを開いた。P―プラスで包装した青果物とそれ以外の比較実験を実施。糖度や硬度などを計測し、おいしさを数値化している。近年、カット野菜の需要が伸びていることから、カット野菜に特化した設備を設けた。

オープンラボとして青果物の生産者や流通関係者を積極的に受け入れており、同センター開設で「受注のスピードが上がった」(峰島海P―プラスグループマネージャー)。19年度は約180件の来訪があった。

一方で拡販のネックとなっているのが価格だ。青果物の種類や流通の状況に合わせて、微孔の数や大きさを調整するため、通常の包装フィルムと比べ2―3倍となっている。きのこ向けに特化し大量生産することで、価格を同1―2割増に抑えたブランド「ネオフレッシュ」を約5年前に発売。葉物向けの製品も新たに追加した。

住友ベークライトはCS評価センターで「おいしさ」の数値化に取り組む

新型コロナウイルス感染拡大による巣ごもり需要や青果物の高騰の影響で、20年4―9月期のP―プラスの売上高は前年同期より伸びた。一方で生産者らとの商談が難しくなったことから、同センター内に、カメラやスクリーンを設けたスタジオを設けた。「生産者と販売店など、顧客同士の橋渡しも進めたい」(同)と意気込む。

P―プラスについて田中厚フィルム・シート営業本部長は「当社で唯一、社内デザイナーとキャラクターがいる事業」と話す。鮮度保持に留まらず、製品の価値が伝わる包装デザインに関する相談にも応じている。

フードロスへの関心が高まる中、消費者向けに繰り返し使えるP―プラスを発売。“野菜を元気にする男の子”「P―プラスマン」の活躍を描いた絵本を制作したほか、ユーチューブを活用した認知度向上も検討。「我々が発信しなければ消費者にも伝わらない」(溝添孝陽評価CSセンター長)と、モノづくり以外の機能強化にも意欲を燃やしている。

日刊工業新聞2020年11月24日

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