電池材料のトレンド「低炭素化」競う化学大手、EV増産に備える
旭化成は、二酸化炭素(CO2)からリチウムイオン電池の電解液材料を生産する技術のライセンスビジネスを始める。主要な電解液用溶媒の原料の30―50%をCO2にできる。世界的な電気自動車(EV)の生産拡大を前に、電池生産時の環境負荷は無視できない課題だ。三菱ケミカルも負極材新製品で製造時のCO2排出を大幅に削減する。電池材料の低炭素化は重要なトレンドとなりそうだ。
旭化成は、ライセンス提供実績のあるCO2からポリカーボネートを製造する合成設備を基に、溶媒のエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の設備技術を提供する。ECとDMCはポリカ製造の途中で生産される中間体。ポリカを合成する4工程のうち1、2工程の設備と精留塔をパッケージ化し、年産3万8000トンと同7万トン設備を提案する。2022―23年に顧客による第1弾の設備立ち上げを目指す。
ECは民生電池用電解液の主要成分で、DMCは車載電池の主要成分。旭化成の技術によりECは原料の50%、DMCは同31%をCO2にできる。現在、ECやDMCの生産は電池生産と同様に中国に集中している。欧米で溶媒を生産すれば、輸送時のCO2排出も抑えられる。
三菱ケミカルは22―23年に発売する天然黒鉛系負極材の新製品で、製造プロセスの効率を向上し、既存の天然黒鉛系に比べ製造時のCO2排出量を20%削減する。一般的な人造黒鉛系負極材に比べると約60%低い水準。新製品は膨張を抑制し、長寿命特性を高めたことが最大の特徴だが、製造時の環境負荷の低さも「特に欧州勢から関心が高い」(同社)という。
世界各国の野心的なCO2排出削減目標に向けて、EVへの期待はますます高まる。走行時だけでなく、製造時のCO2排出も削減する必要がある。
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