横浜の“海版”排出量取引に地方創生へのポテンシャルをみた!

 コンブやマングローブなど海の植物が吸収する炭素は「ブルーカーボン」と呼ばれており、国が温暖化対策に役立てようと検討を始めた。すでに横浜市は海の保全や海洋資源を二酸化炭素(CO2)排出削減につなげる「横浜ブルーカーボン・オフセット制度」を運用しており、参加企業が増えている。日本は海に囲まれており、ブルーカーボンの活用が広がりそうだ。

 森林が吸収する炭素を「グリーンカーボン」と呼ぶように、海の植物が吸収する炭素を国連環境計画が「ブルーカーボン」と名付けた。国土交通省が6月、ブルーカーボンの役割を考える有識者会議を立ち上げるなど、注目されている。

 横浜市独自のブルーカーボン・オフセットは、排出量取引の“海版”だ。陸での排出量取引は、森林整備や省エネ設備の導入などによるCO2排出削減量を取引可能な「クレジット」にして売買する。クレジット購入企業は自社のCO2排出量からクレジット分をオフセット(削減)できる。クレジット販売者は森林整備や設備投資費の一部を賄える。

 横浜の“海版”排出量取引はブルーカーボンに加え、海洋資源の利用や沿岸部での低炭素化活動も対象とする。NPO法人によるワカメづくり活動、海水が持つ熱を使って運転するヒートポンプ式空調(実施者=横浜八景島)、液化天然ガス(LNG)を燃料とするタグボート(ウィングマリタイムサービス)などのCO2削減量をクレジット化した。

 クレジットは市内に本社がある石井造園や大川印刷、市内に店舗がある丸井グループなどが購入し、CO2を削減した。竹中工務店と西松建設は、市内の工事で発生したCO2削減にクレジットを利用した。クレジット発行量は17年度の55トンから18年度は298トンへと急増した。

 取引が盛り上がっている背景に国際的な潮流ある。温暖化対策の国際ルール「パリ協定」のスタートが20年に迫り、企業のCO2削減意欲が高まっている。クレジットの購入は国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標13(気候変動対策)にも貢献できる。しかも“横浜生まれ”のクレジットなので地元貢献も訴求でき、企業は取り組みを発信しやすい。

 ただ、クレジットが少ない。国の排出量取引制度「J―クレジット」では18年度、17万トンのクレジットがオフセットに使われた。横浜ブルーカーボン・オフセットは累計でも414トンの発行量だ。

 そこで期待するが他の自治体だ。横浜市温暖化対策統括本部の岡崎修司課長は「興味を持つ自治体が増えている」と話す。他の自治体もブルーカーボン・オフセットを開始して横浜市の制度と連携すると、地域を越えたクレジットの取引ができる。

 企業はクレジットの購入で地方の温暖化対策にも貢献できる。他の自治体もクレジットの売却が動機づけとなって省エネ投資が促進される。海に面した自治体が多く、ブルーカーボン・オフセットが海の保全、省エネ投資、地方創生に貢献するポテンシャルがある。
                     

日刊工業新聞2019年7月19日

松木 喬

松木 喬
07月26日
この記事のファシリテーター

19日付日刊工業新聞「SDGs面」から。海洋プラごみ問題が注目されたこともあり、海への関心が高いです。企業はクレジットの購入で「海の保全」をアピールできます。横浜の自主制度なので国の制度上ではCO2削減にカウントされません。しかし海に面した自治体から評価されます。

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