テレワーク推進で部下と意思疎通がとれない。悩める“令和時代の上司”への処方箋

#1 部下を応援するのが「令和の上司」の役目

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「令和」に元号が変わり、1年半を迎えようとしている。この期間にあった出来事を振り返ると、「新型コロナ」一色になってしまう。生活も社会も大きく変化させた新型コロナにより、働き方を見直す動きも多くの企業で見られた。「Withコロナ」とも言われるこの新しい時代に求められる上司像とは、どのようなものなのだろうか。
 書籍『令和上司のすすめ 「部下の力を引き出す」は最高の仕事』の発売を記念し、特集「”令和上司”に必要な力とは?」を連載する。第1回では、著者・飯田剛弘さんに「令和の上司」の役目を解説してもらう。

─現役の上司が働いてきた時代を振り返ると「昭和」「平成」「令和」のいずれかだと思われますが、各世代を象徴する上司像の特徴とは何ですか。

昭和型の上司は、「仕事は見て盗むもの」とか「頑張れば何とかなる」という感覚を信じて疑わないと思います。総じて仕事は厳しく、でも義理人情に厚く、顔を合わせて話すスタイルで仕事を進めるのが王道と考えていた方が多かったのではないでしょうか。飲み会や食事会なども互いを深く知るための必要手段として、上司なりに気遣ってやってきたことかもしれません。今は、労働時間外に行われる飲み会とかへの強制的な参加だとパワハラとなってしまいますけどね。

平成に入ると、携帯電話やインターネットが普及し、人と会わないコミュニケーションが急速に広まり始めます。そうした中、義理人情を重んじる昭和上司との間で世代間ギャップがみられるようになりました。平成時代の上司は、今まで以上に管理者である自身もプレーヤーとして結果を出さなければならず、部下を育てる時間がないということが起きてきました。その結果、上司-部下間でコミュニケーション量が減り、互いを理解することが難しくなったのです。

そして、令和の時代を迎えます。特に今年、2020年は新型コロナウイルスへの対策として、テレワークを推奨する企業が増えました。これが決定打になります。会社に集まり阿吽の呼吸で進める昭和型の仕事から、多様な働き方でも確実に成果を出す令和型の仕事にシフトが迫られています。今はちょうど過渡期にありますが、ビジネスの本質が『人と人のつながり』である点は従来と変わらないのです。令和上司は、環境が激変しても部下ときちんとコミュニケーションがとれ、また部下の力を信じて引き出すことができる上司像を言います。

─上司をやっていくのが、ますます大変な世の中になりました。

まず、目の前の仕事を回さないといけません。また、部下育成やチーム運営などもやらないといけない。一方で時間がなく、部下とのコミュニケーションが難しいなど、間違いなく上司は大変です。あらゆることで多様化が進み、いろいろな環境で多様なメンバーと仕事をしないといけないので従来よりも気を遣います。ましてコロナの影響でテレワークが強いられ、チームをまとめるマネジメント能力が正直試されます。

─悩める上司に処方箋を授けてほしいのですが、飯田さんはどんな上司だったんですか。

自分で言うのもなんですが。決まったスタイルがないのが特徴かと。複数の国のビジネスに関わりたくさんの人と仕事をしたことで、状況や人によってスタイルを柔軟に変えられるようになりました。

たとえば、仕事をする上で必要なスキルや知識を持っている人にはあまり細かいことを言わず、ゴールや成果物だけをきちんと伝え、あとはやっていただく。週1回のミーティングで、軽く状況をフォローする程度です。一方、スキルが十分でない人については、最低限学んでもらうようサポートします。自分で教えることもあれば、他者の協力を得てトレーニングしたり外部研修を受けさせたりします。また、チェックリストのドラフトを作ってもらうなど、やることの整理も含めて支援しています。

こうしたスタイルを身につけたのは、ある経験からでした。担当領域が増えて部下のサポートで手いっぱいになり、自分の仕事をする時間がなかなかとれない時期がありました。そんなあるとき、上司と一緒に海外出張していて、搭乗ゲートで案内を待っていたときに優しく諭されたんです。「部下がいたら、自分の時間やリソースの半分は部下に使うことになる。部下の人数が増えれば、もっとそうなる。そういうもんだよ…」と。「ああ、上司はちゃんと自分の仕事を見てくれているんだ」と心強く感じました。

上司はそれ以上何も言いませんでしたが、これには無言の続きがあって、「ステージが変わると今までのやり方や考え方では回らなくなるから、変えていく必要があるよ」と教えてくれたんだと思います。そんな気づきを与える上司でいたいですよね。

─過去に出会ってきた上司の中で「これこそ令和上司!」というエピソードは。

新刊の中でも触れたことなんですが、米国本社にいるグローバルのマーケティングの責任者は印象的です。その方が新しく職場についた際、業務について「少し教えてほしい」ということだったのですが、次々と質問が飛んできました。その質問内容が数値や、こちらの具体的な回答を引き出すものばかりで、曖昧さを許さず追求する、好奇心の強さを感じました。

現状を少しでも良くしていこうと、「もっともっと」という想いが溢れていました。言い訳なんてしません。ただ、目の前の仕事に情熱を持っているのです。令和上司のキーワードは「変革・改革への志向」ですね。

─本の中で盛んに推奨されている「部下を応援する」とどんなことが起きますか。

部下を通じて成果を出せるようになります。つまり、チームとして成果を出せるのです。部下の立場から言うと、見守ってくれてサポートが得られれば、安心して仕事に取り組め、いろいろ試すことができるのでより良い結果を出しやすいと思います。また、上司が応援することで新しいチャレンジをしてくれ、成長につながりやすいです。何より一番は、部下だけではなく上司が、部下を通じて新しい学びや経験ができることです。自身も成長できるんです。

─一方で、上司目線から「部下を応援する気持ちになれない」という正直な意見もあるかと思いますが。

まずは「なぜ、そういう気持ちになれないか?」を掘り下げてみたらどうでしょうか。賛否あるかもしれませんが、もっと自分勝手に考えてもいいと思います。つまり、部下を応援することによる自身のメリットを考えるのです。「チームとして成果を出せるから」と思うのも一つです。また、単純に「すべては自分のため」と暗示をかけ、「私の経験にプラスになるから」と思ってやるのもいいのでは。結果的に、双方にとってプラスになります。

─上司の存在意義はこれからどうなりますか。

特にテレワーク環境下だと、今までのように「職場で、部下の”仕事ぶり”を見て管理する」ことが難しくなっていきます。そこで上司としての、管理職としての価値をどう提供できるかについて考えなければならなくなります。

仕事をする上では、結果を出すことが求められます。そう考えると、チームを任された上司は「チームで成果を出す」ことが問われます。これだけ働く環境が変わり、多様な人と仕事をすると、性悪説で監視するのではなく、性善説に立って部下一人ひとりが活躍できるようサポートすることが欠かせません。部下の仕事の妨げになるものを取り除き、仕事をしやすい環境をつくるのです。各自が高いパフォーマンスを出すため、部下の成長に協力したり、部下の力を引き出したりするようガイドすることです。「会社の目標」と「部下の個人的にやりたいこと」の共通部分を見つけ、貢献意欲を高めることもより大切になります。

また部下育成の観点からは、終身雇用制度での働き方や考え方、また自分の過去の経験から、多くの日本企業はまだ「自分で努力して育つもの」という根性論が残っています。上司は「チームで成果を出す」という目的を意識し、部下の成長をどうサポートできるのか、また部下の力を引き出すために何ができるのかを考えるべきです。

─苦しい、苦しいと思っている上司の方にも責任がありそうです。

世間では「働き方改革」や「仕事変容」が盛んに言われていますけれども、やるべきことがよりシンプルにはっきりしただけで、結局やらなきゃいけないことの本質は変わっていないんです。成果を出すことです。「私がやらなければ」「私が指示を出さなければ」と考えるのではなく、部下やチームメンバーは一緒に成果を出す“パートナー”なんだと、部下との関係や向き合い方を少し考え直してみるきっかけにしてくれると嬉しいですね。

─ここまでのお話は「上司-部下」の関係以外にも使えそうですね。家の中を整理しようにも、パートナーが物を増やしていき、収拾がつきません。

こだわりって人それぞれですもんね(笑)本書で紹介していますが、「相手視点でのやりとりを図る」については、どんなシチュエーションでも使えると思います。細かいテクニックというよりかは、心構えとして参考になるのではないでしょうか。

相手の立場になって、思いやりを持って伝えることは大切ですし、相手の話をきちんと聞く機会や場をつくることは、仕事や家庭と分けなくても必要ですよね。「場」というのは環境だけでなく、「時間」も指します。

最後に、自分の思いを伝えるときは、『私』を主語にして伝えることも大切ですね。多様性のある社会においては、自分の意見をきちんと伝えることは重要なので、この言い方は、これからますます大事になるかと思います。たとえば、「私は整った部屋で生活したい」「物が多いと、掃除するのが大変なので、私は疲れてしまうんだ」みたいに、まずはストレートに伝え、相手の想いも聞き入れて、お互いが納得する快適な生活空間をつくり上げていくのはいかがでしょうか。言うほど簡単ではないでしょうが(笑)

大事なことは、相手に寄り添う、相手の立場で考えるということだと思います。これは、仕事、プライベート関係ないです。

【略歴】飯田剛弘(いいだ よしひろ)

愛知県生まれ。2001年、南オレゴン大学卒業(全米大学優等生協会: Phi Kappa Phi 所属)後、インサイトテクノロジー入社。2004年よりインド企業とのソフトウェア共同開発プロジェクトに従事。その傍ら、プロジェクトマネジメント協会(PMI)の標準本の出版翻訳に携わる。マーケティングに特化後は、データベース監査市場にて2年連続シェア1位獲得に貢献。市場シェアを25.6%から47.9%に伸ばす(ミック経済研究所)。
 製造業の外資系企業FAROでは、日本、韓国、東南アジア、オセアニアのマーケティング責任者として、日本から海外にいるリモートチームをマネジメント。アジア太平洋地域でのマーケティングやプロジェクトに取り組む。人材育成や多様性のあるチーム作りにも力を入れ、1on1ミーティングは1,000回を超える。
 2020年、ビジネスファイターズ合同会社を設立。現在、多様なメンバーと協働し、グローバルビジネスで結果を出してきた経験を基に、経営やマーケティングの支援、グローバル人材の育成やリモートチームのマネジメント支援(研修・講習・執筆)など多方面で活動中。
 著書に『童話でわかるプロジェクトマネジメント』(秀和システム)、『仕事は「段取りとスケジュール」で9割決まる!』(明日香出版社)、『こじらせ仕事のトリセツ』(技術評論社)がある。
https://bizfighters.com/

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<新刊の紹介>
書名:令和上司のすすめ 「部下の力を引き出す」は最高の仕事
著者名:飯田剛弘 著
四六判、296頁、1,650円

<販売サイト>
Amazon
Rakutenブックス
Yahoo!ショッピング
日刊工業新聞ブックストア

<書籍紹介>

令和の時代に必要な「上司の務め」を棚卸し。成果を出せない社員の扱いに苦悩する一方で自身も仕事変容に迫られる上司に、部下への仕事の授け方や距離の保ち方を詳述。チーム・個人双方で結果を残す鉄則を整理します。育てるプロセスから自身が成長できる勘所も示します。

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