「時間はかまわない雰囲気があった」ガス事業会社、働き方改革に着手した事情
サーラグループは、働き方改革で労働時間の適正化に取り組んでいる。2017年に働き方改革のスタートを宣言し、時間管理の徹底や時差勤務などにより長時間労働を削減する取り組みを増やしている。グループの中核企業であるサーラコーポレーションは、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて在宅勤務の活用を進めており、離れた場所でもコミュニケーションを取りやすくするための環境を整えている。(名古屋・市川哲寛)
サーラグループが労働時間や過重労働に対する関心を高めたのは15年。それまで「ガス事業は24時間365日安全を守るため、時間は構わない雰囲気があった」(深津雅生サーラコーポレーション人事戦略部人事戦略グループマネージャー)。そこで17年に労働時間の実態を調査し、長時間残業や休日出勤が多い社員がいることを把握、すぐさま働き方改革に着手した。
翌年にはグループ各社のトップが改革で取り組む内容を宣言。10年から隔年で始めた社員の意識調査でも18年に新たに労働時間に関する質問項目を設けるなど意識を高めた。
時間管理を徹底するため、19年には勤怠システムと社員が持つパソコンのログのオン、オフの時間を連動させた。各社員が申告する出退勤の時刻と付き合わせるとほぼ連動していることが分かり時間管理に活用している。また、ワークライフバンスの講演や上司と部下が効果的に面談するため管理職対象の研修なども実施している。
これ以外の取り組みはグループ各社が個別に対策を考え、残業や休日出勤の削減を図っている。業容や勤務形態が異なるため、実態に即した有効的な手段を各社が考えたほうがよいと判断した。各社は時差勤務や時間有給休暇制度の活用、現場との直行直帰の承認やウェブ会議システムの活用で移動時間を削減に取り組んでいる。
採用面でも「夜遅くまで仕事しているイメージを持たれていた」(大辻祥子サーラコーポレーション人事戦略部長)だけに、従来のイメージをなくすため改善に努めている。
サーラコーポレーションは、在宅勤務者の比率を現在の15%から50%に引き上げる方針だ。パソコンなどのハード面、仕事の見える化やコミュニケーションといったソフト面を整備する。これにより生産性向上や通勤時間の削減などを図る。
パソコンは更新のタイミングでカメラ付きパソコンを導入、コミュニケーションツールとしての利便性を高める。ソフト面ではマネジメントを強化し、仕事としてやるべき範囲や目標、成果を明確にして仕事を見える化する。同ツールの積極的な活用で社員間のコミュニケーションを促進し、仕事の道筋やゴールを定める。働く場所や距離に関係なく仕事できる環境を整える。
サーラグループでは人事担当者の会合などで各社の取り組みを情報共有し、効果的な働き方改革の取り組みの導入を促進している。「労働環境の改善は図れている」(大辻部長)と自信を深める。