ステンレス各社は約2割の減収、利益では明暗のワケ
ステンレス3社は2020年4―9月期の売上高が、コロナ禍による鋼材の需要減で前年同期比2割程度減少した。日本冶金工業(連結)は販売価格が改善して経常増益となる一方、日鉄ステンレス(単体)と日本金属(連結)は経常赤字で、明暗が分かれた。21年3月期業績予想を公表した日本冶金工業は各利益が減益、日本金属は当期赤字の見通し。コロナ影響は飲食関連の業務用厨房(ちゅうぼう)や産業機械を中心に当分続く見通しで、各社は収益の改善を急ぐ。
日鉄ステンレスは4―9月の鋼材出荷量が47万8000トンと、前期比25・4%減。設備稼働率の低下で製造コストが上がるとともに、低価法による在庫評価損を迫られて94億円の経常赤字となった。
事業体質を強化するため、衣浦製造所(愛知県碧南市)の精密品設備を9月末に停止。熱間圧延設備も予定を2カ月前倒しし10月末に止めた。同社は「聖域なきコストの改善、削減を進めていく」。
日本冶金工業は、販売数量で一般材が前年同期比23・4%減、高機能材が同16・4%減となったが、原料価格に見合うマージンの確保や需要に即した生産体制で増益となった。
中期経営計画では、需要の本格回復を見込む23年3月期に、高機能材売上高比率45%、連結営業利益90億円以上の達成を目指す。
日本金属はコロナ禍に加え、19年11月の板橋工場(東京都板橋区)の圧延工場火災に伴う代替工程の生産コスト増(約12億円と推計)で収益が悪化した。
新設設備の量産稼働は22年3月期終盤を見込む。競争優位性を持つ自動車用光モール向けといった成長製品の拡販などに務める。
日刊工業新聞2020年11月13日