NECが大型M&A! スイスのアバロックを買収し新領域での成長を狙う
NECが海外事業の新成長に向け、大型M&A(合併・買収)による攻めの一手を繰り出した。約2360億円を投じて、スイスの大手金融ソフトウエア企業のアバロックを2021年4月までに買収し、「デジタルファイナンス」領域に本格参入する。金融資産管理を中心としたSaaS(ソフトウエアのサービス提供)型のリカーリング事業(継続的に収益を生み出すビジネスモデル)で金融デジタル変革(DX)に挑む。(総合1参照、編集委員・斉藤実)
NECはこれまで海外事業では「セーファシティーズ」と呼ぶ、ブランドを打ち出して、政府系公共機関や自治体向け「デジタルガバメント」領域で実績を積み上げてきた。
中核となるのは18年に713億円で買収した英ノースゲートと、19年に1360億円で買収したデンマークのKMD。両社の事業の相乗効果に加え、NECが強みとする生体認証や人工知能(AI)技術などを組み合わせることで、19年度実績の営業利益率はノースゲートが13%、KMDが7%を達成した。KMDは金融分野での事業拡大にも力を注いでいる。
新たにアバロックを迎えることで、デジタルガバメントにデジタルファイナンスが加わり海外事業の両輪がそろう。デジタルサービスで必須の身元確認をはじめ、この二つの領域は連携することで相乗効果が見込める。またAIを活用し資産アドバイスの質を高めるといった展望を描ける。AIなどNECが持つデジタル技術との「親和性が高い」(新野隆社長)。
アバロックは欧州で進むオープンバンキングに向けて、フィンテック(金融とITの融合)企業などとも連携し、AIやブロックチェーン(分散型台帳)などを活用したデジタル化への対応を推し進めている。
NECはアバロック、ノースゲート、KMDが持つソフトウエア群をSaaS事業として束ね、それぞれを横展開しながらNECグループの販路も活用することで、相乗効果を高める方針だ。
アバロックは構造改革などの影響で18、19年と2期連続で営業赤字に陥っている。これに対して、5日のオンライン会見で森田隆之副社長は「アバロックのリカーリング率は70−80%と高水準。しかもEBITDA(税引き前の当期利益+減価償却)で年15%成長が期待できる」と指摘。これを踏まえ、約2360億円の買収金額について「将来の成長性と収益性という意味で適正な金額だ」と語った。