NECは再び世界へ?DX事業のグローバル展開はものになるか
NECはデジタル変革(DX)事業を拡充する。戦略・構想策定などのコンサルティングの強化やDXを具現化するメニューの整備に加え、これらを支える共通基盤「デジタルプラットフォーム」を北米から順次グローバル展開する。
吉崎敏文執行役員は「日本、米国、インドの3カ国での共同体制を整備し、国内外のDX基盤を一つのアーキテクチャー(設計概念)で統一した」と説明。国内に続き、DX事業をグローバル展開していくと強調した。
併せて、デジタルプラットフォームの強化策として、データ活用を促進する。多様な顧客行動やモノの動きを即時把握し、見える化や分析シミュレーョンを行うことで、DXの肝となるデータ駆動型ビジネスを加速する。
コンサル体制の強化では、実装で強みを持つネットワーク技術者を上流の戦略コンサルタントやビジネスデザイナーとして育成。「戦略コンサルタントらが経営層の相談役となり、顧客先が目指す姿をともに描きながらデジタルシフトを進める」(吉崎執行役員)ことで、NECの強みを前面に打ち出す考え。
さらにビジネスデザイナーによる「フューチャー・クリエーション・デザイン」体制を整備。社会や客先が抱える課題の定義から試作検証まで迅速に行うことで、デジタルシフトを加速する。
コロナ禍で問われるサプライチェーン(供給網)の再構築や、「3密」対策への人工知能(AI)の活用などの優先課題の見直しや早期対策にも応える。
日刊工業新聞2020年7月8日
過去最高益、国内依存が皮肉にも…
NECの2020年3月期連結決算(国際会計基準)は、旺盛な国内IT投資に加え、第5世代通信(5G)の固定網の整備やパソコンの買い替え特需などで、増収営業増益。当期利益は前期比2・5倍の999億円と過去最高益となった。国内市場への依存度が高い事業構造が、皮肉にもプラスに働いた。21年3月期連結業績予想は、新型コロナウイルス感染症の影響が9月までに収束することを前提に、減収営業増益を見込む。
通信事業者向けや社会公共・企業システムなどの主要5部門の全てが増収となり、売上高が3兆円の大台を回復。21年3月期を最終年度とする中期経営計画の目標に対して、営業利益を除き1年前倒しで達成した。
国内事業は5G関連やパソコンの特需に加え、自治体・医療向けサービスや航空宇宙・防衛、金融業向けITなどがけん引した。海外事業はデンマークのKMDの新規連結や海底ケーブルなどの増加で赤字幅が縮小したものの、ディスプレーの落ち込みに歯止めがかからず、38億円の営業赤字となった。
21年3月期は新型コロナの影響分として、予想に対して売上高1500億円の下振れや営業利益で400億―500億円の影響を想定するが、新野隆社長は経費削減や新事業の立ち上げなどのやりくりでコロナの影響をカバーし、中期経営計画の公約達成を強調した。
日刊工業新聞2020年5月13日