デジタル技術で最大25%コスト削減! 三菱ふそう「生産効率向上プロジェクト」の中身
三菱ふそうトラック・バスが2017年に始めた「ファクトリー・オブ・ザ・フューチャー」。デジタル化や自動化などにより生産効率を引き上げるプロジェクトだ。それを指揮してきたのが生産本部長のスヴェン・グレーブレ副社長だ。10月に親会社・独ダイムラーのメルセデス・ベンツトラックの生産責任者に就任するのを前に、三菱ふそうでの取り組みを振り返ってもらった。
―デジタル技術を使った生産効率の成果は。「生産現場全体の予算で見ると毎年、3%のコスト削減を達成している。さらにファクトリー・オブ・ザ・フューチャーを適用した部分に注目すると、10―25%のコスト削減ができた。例えばペーパーレス化や塗装ブースのデジタル化などが挙げられる。重要な領域では設備の保守だ。予防整備に活用できる。故障によるライン停止を避け、ムダな時間を無くせる」
―導入する上での条件は。「まず1カ所で試験的に始める。その後にほかのエリアに展開する。理由は本当にコスト削減に資するかを検証して進めたいからだ。デジタル化の投資をした後に回収できなければ絶対にやらない。最大3年未満で回収できるかが基準となる」
―デジタル化では生産現場の理解が重要です。「『e―進化』という文化を植え付けた。従来の“カイゼン(改善)”では成果は期待できない。次のSカーブ(飛躍的に生産性が向上する状況)実現に向けてデジタル化によるジャンプが必要だ。改善のプロセスステップも定義して、当社の生産革新の起こし方を提示した」
「社員全員に伝えるため、e―進化の概要を記した手帳も作った。ワークショップで改善のアイデアもすぐに提出できるように工夫している。最も重要なのは社員の“マインドセット(物の見方)”だ」
―製造業では工場のデジタル化、自動化が進んでいます。一方、外部からのサイバー攻撃などセキュリティー上の懸念が高まっています。「もちろん脅威だ。サイバーセキュリティーチームが日々、昼夜問わずセキュリティー標準を満たしているか確認している。ダイムラーの標準を三菱ふそうにも導入している。全世界にセキュリティーチームがいて、この標準を保持するため協力している。ファクトリー・オブ・ザ・フューチャーの導入では、セキュリティーチームと協調して外部からの攻撃を防ぐ対応をしている」
【記者の目/使う社員の意識改革 不可欠】
ダイムラーのインド生産子会社(DICV)の生産部門トップを務めた後、15年に三菱ふそうに移ったグレーブレ副社長。生産改革ではデジタル化など最新技術の導入と合わせて、社員が抱く“カイゼン”の考え方も根本的に変える必要性を強調する。国内では生産性向上に向け、デジタル技術の活用が叫ばれる。確実に成果を出すには使う人の意識を変えることも忘れてはいけない。(日下宗大)