「目指すべき企業の姿やビジネスモデルが経営陣の中で議論されていない」

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産業界でデジタル変革(DX)を進めようとする機運が高まっている。新型コロナウイルスの感染拡大で経営環境が激変し、事業変革を迫られているためだ。DXのコンサルティングを行うINDUSTRIAL―X(インダストリアル・エックス、東京都港区)の八子知礼(やこ・とものり)社長に現状などを聞いた。

―DXの実施状況をどう見ていますか。
「2017年には30%以上の米国企業がDXに着手していた。配車サービスのウーバー・テクノロジーズや民泊仲介サービスのエアビーアンドビーに代表されるように、車や部屋がないのに業界のビジネスモデルを変革し高度なオペレーションを確立する事業者が出ている。一方、日本では、会社全体をデジタル化しビジネスモデルを変革する動きが出たのは19年ごろだ」

―日本企業が遅れている要因は。
「(IT投資は)コスト要素というネガティブな印象があり(メリットが)理解されていない。そもそも日本では目指すべき企業の姿やビジネスモデルが経営陣の中で議論されておらず、なぜデジタル化が必要なのか合意形成も進んでいない。経営者はビジョンを明確にし(その上でDXに)落とし込む必要がある」

―DXはIT人材の確保や機器の選定などが難しいですが、貴社はこうしたリソースをワンストップで提供するサービス「リソースクラウド」を8月3日に開始しました。
「アナログ環境をデジタルに移行するサービスで、IoT(モノのインターネット)とSaaS(サービスとしてのソフトウエア)の商材をベースにしている。例えば監視カメラと人工知能(AI)をつなげ、画像を認識して品質を検査したり、トラブルが発生しそうな人の行動を監視したりするソリューションがある。検査工程をなくすなど、人が介在する工程を自動化できる。また、パフォーマンスを継続的に改善するコンサルティングも提供する」

―多額のイニシャルコストを初期に支払うのではなく、月額課金のサブスクリプションサービスというユニークなモデルを採用しました。
「デジタル化に関して複数年にわたって並走するため、手数料レベルを下げて長く付き合えるようにした。経費扱いなので、オフバランス処理を行えるメリットもある。20年度はベータ(試用)版という位置付けで、21年度から本格化する」

―コロナ禍においてデジタル技術をどのように経営に活用すれば良いですか。
「未来が読みにくく、変化の多い時代だからこそ、デジタル空間上でシナリオ別にシミュレーションを行い、有事の際の対応策を持っておくべきだ。設備の稼働状況や為替・原油相場など多くのパラメーターを収集し未来を予測すれば、どんな打ち手があるのかシミュレーションでき、具体的なアクションに落とし込むことが可能になる」

【記者の目/変化に強い企業体質へ脱皮を】

新型コロナの影響の大きい欧米では、DXが一段と進展し競争力が強まると指摘される。DXの導入具合が企業の競争軸になるのは確実で、旧来のビジネスモデルに固執する企業は淘汰(とうた)されかねない。日本の経営者はデジタル化を急ぎ、変化に強い企業体質へと脱皮すべきだ。(編集委員・敷田寛明)

日刊工業新聞2020年8月20日

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