【単独インタビュー】小泉大臣に直撃、日本が環境先進国に返り咲くには?

環境大臣でなくなっても「一生、“再生エネ応援団”」

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環境相 小泉進次郎氏

「環境先進国・日本」の奪還への号砲が鳴った。温室効果ガス排出ゼロの“脱炭素”実現に意欲を示す企業が増え、国際社会での存在感を取り戻している。国は海外から批判が強かった石炭火力発電所の輸出支援策を転換した。脱炭素への機運を追い風とした環境省は満を持し、100近い国が参加する気候変動関連の閣僚級会合を開き、“環境後進国”の汚名返上を狙った。(編集委員・松木喬)

石炭政策 抜本転換 温室効果ガス削減 強化―159社賛同

「気候変動への対応は欧州がリードしているようだが、本来は日本から出た問題意識だ。足りないものがあるとしたらリーダーシップだ」。経済同友会の桜田謙悟代表幹事(SOMPOホールディングス社長)は8月末、小泉進次郎環境相と面会し、地球温暖化対策で日本が世界から遅れたことに悔しさをにじませた。

環境先進国からの脱落に危機感を募らせる企業は多い。イオンや積水ハウスなどが参加する「気候変動イニシアティブ」は2月、政府に温室効果ガス排出削減目標の強化を求める声明を発表し、「脱炭素化に後ろ向きな国という評価が広がれば、世界的なビジネス展開への障害となる」と強調した。この声明には159社が賛同している。

日本に負のレッテルを貼ったのが石炭だ。二酸化炭素(CO2)を多く排出する石炭火力の増設計画がある日本に対し、海外からの風当たりは強い。名指しは避けながらも「石炭中毒」と批判する世界の指導者もいた。

企業には脱炭素への意欲が問われるようになった。その象徴が、再生可能エネルギー100%での事業運営を目指す国際組織「RE100」だ。

脱炭素を目指す国際ルール「パリ協定」採択前の2014年に結成され、欧米や中国企業が参画した。17年にリコーが日本から初めて加盟した時点で90社が活動しており、出遅れた。

いま、挽回が始まった。日本の温室効果ガス排出量は18年度まで5年連続で減少し、90年度の調査開始以来で最小だった。再生エネが普及した成果だ。RE100にも日本の38社・団体が名を連ねる。

企業に厳しい排出削減目標の設定を迫る国際活動「サイエンス・ベースド・ターゲッツ」でも、日本の75社の目標がパリ協定達成に貢献すると認定された。94社の首位・米国と差はあるが、存在感を高めている。

石炭火力についても、政府は輸出支援策の見直しや国内の旧式石炭火力を休廃止する方針を表明した。50年までにCO2排出ゼロを目指すと宣言した自治体も150を超えた。

気候変動で閣僚級会合開催

環境省は3日、コロナ禍からの復興と気候変動対策を話し合う閣僚級会合「オンライン・プラットフォーム」を開いた。

気候変動分野の閣僚級会合で日本が議長国を務めるのは、1997年の京都市での気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)以来。会合で安倍晋三首相は「石炭政策を抜本的に転換する」とビデオメッセージを寄せた。各国に開催を呼びかけた小泉環境相は日本の取り組みを発信した。

「国際協調 経済社会の再設計呼びかけ」

環境後進国の汚名を返上し、企業は国際ビジネスで劣勢をはねのけることができるのか。3日の閣僚級会合の成果を小泉環境相に聞いた。

―会合の成果は。

「96カ国が参加し、46人の大臣・副大臣が発言した。国際協調の機運づくりには、多くの国々の参加が重要だ。会合は今年最大規模の気候変動分野のオンライン会議となり、大成功だった。21年11月の気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の議長国である英国大使からも感謝された。COP26成功への素地をつくれた」

―小泉環境相は脱炭素、循環経済、分散型社会の三つの移行による経済社会の「リデザイン(再設計)」を呼びかけました。

「リデザインのコンセプトが次々に浸透したと確信した。早速、会議でも何人もの大臣が自国の政策とリデザインを掛け合わせて発言していた。シンガポールの大臣は『街をリデザインする』と語っていた」

―これまで「石炭火力への批判で、日本の良い取り組みがかき消される」と語っていました。負のイメージは払拭(ふっしょく)できましたか。

「グテーレス国連事務総長は会合に寄せたメッセージで日本の151自治体、人口にすると7100万人が暮らす街が『ゼロカーボンシティ』を目指すと宣言していることに触れた。間違いなく日本のイメージが変わった。課題がなくなったと言えるほど楽観的ではないが、日本が石炭一色で覆われた状況ではなくなった」

―今回の成果をどう今後の環境外交につなげていきますか。

「21年5月開催の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)、COP26で発信を強化することだ。いずれの開催までに国内で議論を深めることが不可欠だ。コロナ後の社会像を話し合う政府の未来投資会議の基本理念に脱炭素と循環経済が入った。どちらも環境省が言ってきたことであり、各省に政策が浸透していくはずだ」

―会合の成功は企業にも刺激となります。

「これから日本の前向きな部分に目が行くようになる。環境省は日本企業の海外展開を支援する『環境インフラ海外展開プラットフォーム』を設立した。参加した277社・団体とともに再生エネ、省エネ、廃棄物発電、公衆衛生分野で世界市場をこじ開けていく」

―小泉環境相には環境大臣でなくなっても脱炭素に向けた発信を続けてほしいという声が産業界にあります。

「私はどのような立場でも、再生エネの普及を徹底的に進めていく。再生エネの普及に向けて頑張っている人が報われる社会をつくる。これから一生、“再生エネ応援団”だ」

日刊工業新聞2020年9月15日

COMMENT

松木喬
編集局第二産業部
編集委員

まずは1年間、お疲れさまでした。 1年前、就任時の社説に「胸を張って環境先進国と言える国にしてほしい」と書きました、偶然です。 1年前「脱炭素を目指します。ただし再生エネ普及の次第」と言って、脱炭素は国の政策次第としていた企業が多かったですが、最近は「再生エネを増やしてほしい」と政府に訴える企業が増えたと思います。企業が意思表明を始めたのが、この1年の変化でしょうか。

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