精度と安全性が重要な介護ロボット、費用対効果で考える活用場面

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片岡真一郎所長

介護ロボ、「使えない」?「現場の特殊性」に性能基準を

SOMPOホールディングスとSOMPOケア(東京都品川区)が運営する「フューチャーケアラボ in Japan」(同)が、厚生労働省が進める介護ロボットの開発・実証・普及のプラットフォーム構築事業の「リビングラボ」に選定された。同ラボは高齢者施設を模した環境下で、ロボメーカーなどと介護ロボ開発を進めている。高齢化と職員不足を背景に、介護ロボへの関心は高いが現場からは「使えない」という声が多いのも事実。同ラボの片岡真一郎所長に解決策と今後の見通しを聞いた。

―研究所でこれまでに試したロボの数は。
「2019年2月のオープン以来、使用を検討したロボは合計60機種。このうち、今も使い続けているロボは20機種だ」

―ということは、導入したロボのうち3台に2台は、現在は使用していない計算になります。使われ続けるロボと、そうでないロボの差は何でしょう。
「まず精度と安全性。高齢者の入浴状況をチェックする風呂センサーなどは、警報が鳴らないと生命にかかわる。また一般家庭だと風呂に入る回数は1日に1、2回だが、介護施設では8回や10回は当たり前。何度も使っても故障しない耐久性が必要になる」

―一般の機器や製品は、それほど多くの使用を想定していませんね。
「介護機器市場がまだ黎明(れいめい)期だからだろう。スタートアップの中には、基準性能を満たしているから問題ないと考える会社が結構ある。介護現場の特殊性を説明して耐久性を上げると、今度は価格が高くなる。どこまで性能を求めるか、このレベルなら機械より人を使う方が安いかなどと仕事内容ごとに考えるしかない」

―零細施設が多い介護業界にとって、価格は大きな問題です。
「確かに大きな問題だが、利用現場や職員次第で使えるケースもある。高齢者を入浴させて体を洗うロボなどは典型だ。グループホームでは入浴以外に食事や体操などやることが多いため、稼働効率を考えると採算に合わない。しかし、訪問介護の入浴支援サービスならば、重労働を軽減できる利点は大きい」

「身体装着型のロボスーツも介護施設だと着脱に時間がかかり、稼働効率を考えても不経済だ。だがリハビリ施設なら相応の省力化効果が見込める。食事配膳ロボや車いすロボも同様。居室数が多い施設や廊下が長く歩くのが大変な施設なら導入メリットはある」

―清掃ロボやコミュニケーションロボは。
「清掃ロボは現状では『ルンバ』が最適だ。これは、サイズが大きく影響している。コミュニケーションロボでは動物型の『ラボット』の人気が高い。認知症の進む高齢者がラボットの愛らしい姿を見て、症状を回復したケースもある」

【記者の目/性別不問・感染防止など長所】

体温、血圧測定など定性的情報を扱う機器は一定の効果を上げている一方、衣服着脱や排便介助などのロボは難易度が高い。人間の尊厳に直接かかわる上、高齢者の体調や心理に左右される問題もある。ただロボならヘルパーの性別を気にする必要がなく、ウイルスなどの感染防止が期待できる長所もある。費用対効果の壁が高いのは事実だが、開発意義はある。(編集委員・嶋田歩)

日刊工業新聞2020年9月4日

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