骨内部を再現した“ミニ骨”の作成成功!再生医療に応用できるかも
大阪大学の松垣あいら助教、村上愛実大学院生、中野貴由教授らは、生体骨に類似する骨内部を再現した“ミニ骨”の作製に成功した。マウス細胞を用いて、従来難しかった3次元形状での作製。骨の主成分となるコラーゲン内部の細胞制御などで骨機能を再現した。外部から受ける力に反応する“ミニ骨”を生体内に戻すことで早期に健全な骨を再生できるような再生医療への応用が期待される。
バイオマテリアル関連の開発などを手がけるアトリー(東京都渋谷区)との共同研究。研究チームは骨の主成分、コラーゲンとアパタイトの微細構造などに着目。骨表面で骨基質を形成するマウスの骨芽細胞を培養し、骨内部で骨細胞に変化(分化)させた。骨細胞は骨内部で規則的に並び、細胞から長く伸びた細胞突起により骨の応力情報を受け取る。
骨細胞は骨内部に存在するため培養は難しい。細胞にダメージを与えないために骨組織片の酵素処理を繰り返し、マウス骨から生体内に近い状態で骨芽細胞を取り出して培養したという。複雑な細胞網を築く骨細胞の制御は骨の健全な機能発揮に必須。研究チームは産業用ロボットを用いてコラーゲンの分子の並びを制御した。
ミニ骨の内部では、骨細胞同士が密に連絡を取り合う細胞ネットワークを模して構築した。骨細胞は受けた刺激に対して細胞突起の方向を変化させ効率的に応力を受け取れる。
骨細胞は骨の応力を起点に「骨代謝」制御の司令塔として機能する細胞。ミニ骨を用いて骨粗しょう症など骨疾患の創薬ターゲット創出につながると期待される。研究チームは医療分野でも、骨密度から骨の向きによる強さを示す骨質へと治療対象を転換することに対応できる可能性もあるとみる。
今回の研究は文部科学省科学研究費補助金の支援で実施した。
日刊工業新聞2020年7月31日