すごいぞ!私たちの美容に一役買う「幹細胞」
注目の的・幹細胞〈分裂能力のある分化していない細胞〉
幹細胞とは分裂能力のある、分化していない細胞で、必要に応じて多くの異なる種類の細胞を産み出すことのできる細胞です。幹細胞には主に胚性幹細胞(ES細胞)、iPS細胞、成体幹細胞があります。
成体幹細胞は身体の組織に存在し、ある程度の多分化能を持ち、発生過程や細胞死、損傷組織の再生において新しい細胞を供給する役割を持ちます。哺乳類では皮膚、腸管上皮、血球系などの頻繁に細胞補充を必要とする組織に見出されます。
皮膚においては2001年が特筆すべき年で、表皮、真皮、脂肪組織に幹細胞が存在することが別々に報告されました。表皮幹細胞は表皮基底層に存在して新しいケラチノサイトを産み出します。老化した表皮ではターンオーバーが遅くなり、表皮が薄くなるのは表皮幹細胞の機能低下が考えられ、その機能維持のため抗酸化剤などが用いられています。その他に毛包のバルジ領域に存在する毛包幹細胞があり、こちらは毛の成長に関与します。
真皮幹細胞は真皮の線維芽細胞を産み出します。肌の「たるみ」「ハリのなさ」「深いシワ」は真皮のコラーゲンやエラスチンおよびヒアルロン酸などの減少にあります。これらの真皮の成分を作るのが線維芽細胞なので、真皮幹細胞が重要なことがわかります。
加齢によって失われる真皮の幹細胞が、高齢者であっても皮脂腺の周囲には十分に存在していることがわかりました。これを活用することで真皮の若返りに繋がることが期待されます。この真皮幹細胞は血管のまわりでのみ安定に存在でき、そのためには成長因子(PDGF)が必要です。
皮下脂肪組織にも間葉系幹細胞が見つかっており、これは骨や筋肉、脂肪細胞へ分化できることがわかっています。美容で行う脂肪吸引で取れた脂肪組織部分からこの幹細胞を取り出すことができるので、再生医療に使うことができると期待されています。
(「今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい化粧品の本 第2版」より一部抜粋)
<書籍紹介>
人気書籍の第2版が登場!シワなどに関する新しい技術、全成分表示や部外品の申請などの実用的な内容、安全性や環境問題、さらには幹細胞、アレルギーや抗酸化の生体メカニズムなどの新たな項目を追加し、皮膚の機能・構造、化粧品の種類や作り方などの基本を解説する。
書名:今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい化粧品の本 第2版
著者名:福井 寛
判型:A5判
総頁数:160頁
税込み価格:1,650円
<執筆者>
福井 寛(ふくい ひろし)
福井技術士事務所代表
1974年 広島大学大学院工学研究科修士課程修了。同年 (株)資生堂入社、工場、製品化研究、基礎研究〈粉体表面処理〉などの研究に従事。香料開発室長、メーキャップ研究開発センター長、素材・薬剤研究開発センター長、特許部長、フロンティアサイエンス事業部長、資生堂医理化テクノロジー(株)社長、東北大学客員教授、東京理科大学客員教授、信州大学客員教授、大同大学客員教授などを歴任。現在に至る。
工学博士、技術士(化学部門)、日本化学会フェロー、日本技術士会理事、学術振興会先端・ナノデバイス・材料テクノロジー第151委員会顧問、千葉工業大学非常勤講師。
主な著書
「おもしろサイエンス美肌の科学」日刊工業新聞社、「トコトンやさしい染料・顔料の本」日刊工業新聞社(共著)、 「きちんと知りたい粒子表面と分散技術」日刊工業新聞社(共著)、「トコトンやさしいにおいとかおりの本」日刊工業新聞社(共著)、「トコトンやさしい界面活性剤の本」日刊工業新聞社(共著)など
“Cosmetic Made Absolutely Simple” BELLE VIENUS Co., Ltd.(「トコトンやさしい化粧品の本」の英語版)
<販売サイト>
Amazon
Rakuten ブックス
Yahoo!ショッピング
日刊工業新聞ブックストア
<目次(一部抜粋)>
第1章 化粧品って何だろう
化粧品とは何だろう「化粧品の定義」/化粧品成分の考え方「消費者にとって大切な全成分表示」
第2章 外部から身を守る仕組み
最前線にいる皮膚「皮膚の構造」/注目の的・幹細胞「分裂能力のある分化していない細胞」
第3章 化粧品は何でできている?
化粧品の原料はどんなもの?「化粧品を構成している物質」/泡の秘密「泡の性質と利用」
第4章 化粧品の作り方とその性質
化粧品が世にでるまで「化粧品の特性を踏まえて中味、外装を決める」/汚れの落とし方「洗浄の機構とメーク落とし」
第5章 化粧品の安定性、安全性と環境対応
化粧品成分を実際に調べるには「化粧品に使われる成分の分離方法」/化粧品成分の構造を決めよう「化粧品成分の構造解析」
第6章 機能性化粧品とその将来
シワを改善する技術「シワ、たるみの発生、評価法と老化防止」/毛穴が目立つのはなぜ?「毛穴ケアとケミカルピーリング」