【新型コロナ】高輪ゲートウェイ駅でロボットが消毒・飲食物搬送、非接触ニーズに対応
JR東日本は、東京都港区の高輪ゲートウェイ駅構内で消毒作業や飲食物搬送など自律移動型ロボットの実証実験を報道公開した。新型コロナウイルス感染症による社会環境の変化に伴い、公共スペースでの消毒や非接触ニーズが高まっていることを受け、実証テーマを設定。ニューノーマル(新常態)に対応したロボットで安全・安心な駅・駅ビルづくりにつなげるとともに、将来の労働力不足に備えて生産性改善を狙う。(小林広幸)
共創拠点を開設
JR東は高輪ゲートウェイ駅を「新しいイノベーションの発信拠点」(佐藤勲技術イノベーション推進本部データストラテジー部門部長)と位置づける。3月の開業以降、案内や清掃・警備のロボットを、営業中の駅構内でも実証実験し、稼働状況や利用者の反応などを確認してきた。
7月からは消毒ロボや手荷物搬送ロボ、軽食・飲料搬送ロボなどの実証も始めた。駅前で2024年度のまち開きを予定する品川開発プロジェクトでの導入を見据え、駅構内にはパートナーとの共創拠点を開設。今回のロボ実証は主に、非公開の同エリアや営業時間外の駅構内で行う。
課題洗い出し
消毒作業ロボは日本信号・サイバーダイン、ソフトバンクロボティクス、ZMPの3種を実証。それぞれ手すりへの消毒剤噴霧や床面清掃などの機能を持つ。消毒は「大変な労力がかかる」(佐藤部長)ため作業効率の向上が課題。「より安心して利用頂けるよう早く実導入したい」(佐藤部長)と話す。
実際の駅を使った実証によって、実導入に向けた課題を洗い出して、改善につなげるなど開発を加速することができる。ガラスがふんだんに使われた最新の駅は、レーザーセンサーで位置を検出する自律移動型ロボにとって苦手な環境。多くの利用客がスマートフォンやモバイルルーターを使う駅の構内は、安定した無線通信の確立も悩みとなっている。
既存技術展開も
また駅構内は点字ブロックやスロープがありロボの移動も至難の業だ。飲料の運搬に参加する花岡車輌(東京都江東区)の自律型無人搬送車(AGV)はロッカーボギー機構を搭載し、難路もお手の物。100キロ―200キログラムの荷物を搬送できる能力を持ち、町工場や倉庫で実績を積んできた。空港の格納庫に続いて鉄道施設への導入を目指す。花岡車輌の花岡雅取締役は「駅のバックヤードなどでも使ってもらえるものにしたい」と、開発に意欲を見せる。ロボットそのものに限らず、他用途からの既存技術展開の可能性もある。
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