消えたインバウンド、民営「関西エアポート」は最大の試練をどう乗り切る?

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関西エアポートの山谷社長(左)から水際対策などの説明を受ける吉村大阪府知事(中央)

新型コロナウイルスの感染防止に伴う各国の移動制限により、航空需要は消失し、空港の経営へ影を落としている。とりわけ外国人観光客(インバウンド)の受け入れで旅客数を伸ばしてきた関西国際空港(関空)への打撃は大きい。関西財界や周辺自治体は水際対策の強化で早期の需要回復を目指す考えだが、再び国内でも感染者が増加する中、航空需要が以前の水準へ戻る見通しは立たない。2016年4月の民営化以降、運営会社の関西エアポート(大阪府泉佐野市)には最大の試練が訪れている。

「こんな関空は初めて」―。照明が消え、人通りのない関空第1ターミナル4階の国際線フロアを視察した大阪府の吉村洋文知事は6月、視察を終え、こう漏らした。関空の国際線旅客便発着回数は6月、前年同月比98%減と大幅に減少。政府は外国人の往来再開に向けた交渉を各国と進めるものの、利用はビジネス客に限られるのが現状だ。

関西エアポートが発表した20年3月期の連結決算は、2月以降の航空需要落ち込みを受け、売上高が前期比2%減、営業利益が同8%減と民営化以降初めての減収減益だった。4月以降は感染状況がさらに深刻化したことから、21年3月期の決算へは大きな打撃が見込まれる。

同社の山谷佳之社長は「(タンカーが連絡橋に衝突した18年の)台風、日韓の関係悪化、疫病と、1年半に(有事が)3度起こっている状況だ」と苦境を説明。当面の公的支援は求めないものの、「(収束まで)3年となると厳しい環境になる」と危機感を強める。

関西財界や自治体で構成する関西国際空港全体構想促進協議会は今月、国土交通省を訪問し、水際対策の強化や国際線の需要回復に向けた政策を政府へ要望。1日2万人規模のPCR検査ができる出入国者専用の検査センターの設置などを求めた。大阪府の吉村知事は同センターについて「夏には設置してもらいたい」考えだ。

ただ、大阪府の足元の感染者数は4月の緊急事態宣言時を超える勢いで増えている。中期的には水際対策の強化が不可欠だが、関西エリアの感染状況が落ち着くまでは外国人客の呼び込みが難しく、自治体や観光関係者は対応に苦慮する。

一方、関西・神戸・大阪国際(伊丹)の3空港の最適活用に関しては長期的な視野で議論が進みそうだ。神戸空港は現在、基幹空港である関空への配慮から国内線のみ就航が認められているが、将来的な航空需要拡大を見据え国際化の必要性が指摘されてきた。

大阪・関西万博が開幕する25年までの国際化が焦点となる神戸空港

関西財界や自治体でつくる「関西3空港懇談会」では25年開幕の大阪・関西万博へ向けた対策を議論。19年には神戸空港の発着可能枠を1日60便から同80便へ拡大することや、国際化の検討を25年までに始めることで合意している。新型コロナの影響で神戸空港の利用者も激減し、規制緩和後に80便が実現したことはないが、中期的視野で規制緩和を目指す財界の方針は変わらない。

関西3空港懇談会の座長を務める関西経済連合会の松本正義会長は「関経連としては(神戸の国際化を)万博に間に合わせてほしい」とし、今後の議論の焦点を25年までの国際化としたい考えだ。神戸商工会議所の家次恒会頭(シスメックス会長兼社長)も「パンデミック収束後、中長期的に見据えると航空需要は増大する」と、引き続き規制緩和を求める。

3空港を運営する関西エアポートや自治体が当面の対応に追われる中、事前協議は難航するものの、財界は今夏中にも次回会議を開催したい意向。コロナ禍を乗り越え、関西飛躍の道筋を描き直すことができるか、手探りの調整が続く。

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