4年前に本格導入し利用者65%、コロナ禍で見えた武田薬品「テレワーク」の底力

  • 1
  • 3
患者の健康と医療の未来に貢献するため従業員の多様な働き方も支援(同社公式サイトより)

武田薬品工業は、2016年5月にテレワークを本格的に導入した。新型コロナウイルスの流行により、多くの企業が急ピッチで導入を進めるが、働き方改革の中で早期から取り組んできた。武田薬品は16年以前も在宅勤務制の活用に積極的だったが、生産など出社が必要な業務を除いた全ての社員が利用可能な制度に変更し、浸透した。18年3月には36%が在宅勤務制を活用。20年5月末時点では、在宅勤務を含め働く場所を限定しないテレワークの利用者は、65%にまで拡大したという。

こうした取り組みを長年続けてきたことで、新型コロナに急な対応を迫られたことは少なかったという。武田薬品の岩崎真人取締役は「実務レベルにテクノロジーが浸透している。新型コロナの影響で本当に困ったという場面はかなり少なかった」と説明する。

新型コロナによる緊急事態宣言の発出後、テレワークが可能な全社員について原則在宅勤務を決定。スムーズな対応の背景には、テレワークが可能な環境づくりに力を入れてきた経緯がある。

まず、持ち運び可能なモバイル端末を導入。社内外を問わないシステムへのアクセスやデータ共有など対応を進めた。現在はメールやファイル保存などの機能をクラウドシステムに移行し、利便性が向上したという。

さらに世界各国の社員とのコミュニケーションを促進するため、テレビ会議システムや社内チャットを活用する体制を構築。管理職向けの講演会や研修を定期的に実施し、意識改革も進めた。こういった取り組みは、10年から始めており、ハードとソフト両面で作り上げた土台が、新型コロナの流行下で真価を発揮したようだ。

ただ、医療機関への訪問が制限されたこで、MR(医薬情報担当者)の活動は、新型コロナの影響を大きく受けた。武田薬品でも必要なものを除いて訪問を停止したため、医療機関へのコミュニケーションには電話やメール、デジタルツールを使った面会で対応した。取り組みが進む中で、リモートやデジタルで対応できることとできないことが可視化されつつあるという。こうした知見を常に評価し、業務へ反映していく方針だ。

産業界へのテレワークの浸透は、新型コロナが一つのきっかけになった。しかし武田薬品のように長期的に取り組んできた企業と、新型コロナ対策として一時的に導入する企業とでは、テレワークの位置付けは異なるように映る。感染対策だけでなく、生産性や働きやすさの向上といった価値に焦点を当て、テレワークの定着につなげていく必要がある。(安川結野)

関連する記事はこちら

特集