「軽量で高強度」「高放熱性」。金属基複合材をオンリーワン技術で開発の中小企業

雑誌『工業材料』2020年8月号 企業・研究所訪問&Interview

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●溶湯鍛造法の応用技術
①アルミニウム高機能化

軽金属であるアルミは、従来の鉄と置き換えることで部品の軽量化に貢献できるが、一方で強度が弱くなり内部に鋳巣ができやすく、これまでは圧縮空気や液体と接触する部品に使用するのは難しい面があった。鋳巣があるとそこから圧縮空気や液体が漏れてしまうためである。特に大型の部品ほど鋳巣ができやすく、軽量化のニーズが高い自動車、航空機、船舶など部品に使用できないことが課題であった。

溶湯鍛造法とは

しかし、溶湯鍛造法で製造したアルミは非常に緻密で、極めて鋳巣が少なく、アルミの弱点である疲労強度を改善した高機能なものである。大型部品における内部欠陥の問題も克服でき、これによりアルミをより多様な用途に応用することが可能となった。

現在、同社の高機能アルミは、静音性の向上、軽量化による輸送コストの低減、環境負荷の低減に寄与している。その一例として700系新幹線にも、このアルミでつくった空気圧縮機用の旋回渦巻き体(スクロール)が採用されている。

②鋳ぐるみ

鋳ぐるみとは、ヒーター管や冷水管などを溶湯アルミでくるむ技術である。この技術は半導体製造で用いられるサセプタヒーター(ウェハを載せる台)をはじめ、6・8インチヒーター、リングタイプヒーターなどのヒーターに用いられている。

半導体製造装置ではウェハを真空中で加熱して表面に薄膜結晶を成長させる。現在はウェハの大型化が進み、12インチウェハが主力であるが、大型になるほど熱が不均一になりやすい。サセプタヒーターの表面にはアルミが施してあるが、アルミは熱膨張率が大きいため、加熱と冷却を繰り返すことでベースが波打ち、平面度が下がってしまうためである。

そこで同社では、波打ちを抑えるためベースにカーボンやセラミックスを強化材料として加え、さらに、それを溶けたアルミで鋳ぐるみすることでベース(カーボン・セラミックス)とヒーターなどをアルミの接点の空気層をなくしている。これにより、熱伝導率と均熱性を大幅に向上させることに成功した。

③接合

熱膨張率の異なる異種素材同士や、複雑な形状の部品を接合する技術のニーズは高いが、これまでの技術では接合は容易ではなく、リベットやねじで止める必要があった。これに対して同社は、溶湯鍛造法を用いることで、リベット不要の画期的な接合技術を開発した。

アルミと銅、アルミと鉄、アルミとセラミックスなど、異種材料を溶湯鍛造法で接合することでマルチマテリアルを作り出し、軽量化をはじめ、耐腐食性や耐摩耗性、均熱性を高めたり、電気抵抗率を低減させたりすることができる。また、大面積、大容積の接合も可能になった。

現在は、電池モジュール用バスバー、ステーキ皿、変電設備の端子受座、列車のディーゼルピストンなどに応用されており、今後は、自動運転技術に必要とされるセンサなどへも展開していく予定である。

溶湯鍛造法の応用技術 接合
④複合化

溶湯鍛造法により、強化材とマトリックス材を複合化した材料も製造している。多孔質の強化材にマトリックス材を加え、高圧をかけることで含浸させ、両者を一体化させる。通常、異素材同士を複合化することは非常に困難であると言われているが、同社の積み上げてきたノウハウにより、様々な複合化を実現している。その素材は単一素材では得られない機能・物性を有している。

たとえば、強化材としてセラミックスを用いることで、強度やヤング率、熱特性の向上および、熱膨張率のコントロールが可能になる。マトリックス材には、アルミのほか銅やマグネシウムも用いている。

1960〜70年代に高圧鋳造法でつくられた複合材は加工性が低く、この点も技術が普及しなかった理由の一つだったが、同社は物性の高さに加えて加工のしやすさを大前提に開発を行い、量産に対応しやすい素材を提供できている。この技術により、金属複合材料という素材の位置付け自体が変わりつつあるといえるだろう。

この技術で製造した主な複合材を以下に示す。現在も新素材の開発に積極的に取り組んでいる。

工業材料2020年8月号

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