【動画あり】公開された日産の新型EV「アリア」、価格500万円超でも失敗が許されない理由

構造改革、アライアンスの試金石。「リーフ」の知見ふんだんに

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内田社長(右)とグプタCOO

日産自動車は15日、電気自動車(EV)のスポーツ多目的車(SUV)「アリア」を2021年中頃をめどに日本で発売すると発表した。電動化と将来の自動運転につながる運転支援技術を融合。旗艦車種としてブランド再構築を担う。21年末までに欧州、北米、中国にも投入、経営再建を占う試金石となる。

「クロスオーバーの快適さや、EVが持つ運転の楽しさを併せ持つ自信作だ」。内田誠社長は同日開いたオンライン発表会でこう期待を表した。搭載電池の容量は65キロ―90キロワット時で2種類。1回充電の航続距離は社内測定値で最大610キロメートル。30分の急速充電で最大375キロメートル走行できる。補助金利用の実質価格は約500万円から。

日産は「アリア」で、2010年に発売した電気自動車(EV)「リーフ」で培った技術や経験を活用。先進の運転支援技術を組み合わせ、快適さを楽しむような新たな移動価値を提案し、同社の車開発の一つの方向性を示した。

「日産のエンジニアとデザイナーは自ら持つ知恵と技術のすべてをこの車に注ぎ込んだ」。日産のアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)は15日のオンライン発表会で新型車への意気込みをこう表現した。

アリアは高速道路の同一車線内で、ハンドルから手を離した状態で運転できる機能「プロパイロット2・0」を搭載。準天頂衛星システムを活用して自車の位置を高精度に把握することなどで正確な走行を実現した。

自動運転につながるこうした機能の進展で運転の負荷が軽減していく時代を見据え、車内の過ごし方も電動化技術を応用することで抜本的に見直した。EV専用車台を開発し、床部に厚さ約10センチメートルのリチウムイオン電池を搭載。駆動用モーターの小型化などで前後輪の間隔を延ばし、中型車のCセグメントでありながら一つ上のセグメント並の広い室内空間を確保した。また空調機器を従来のエンジンルームに納め、平らな車内空間も実現。自動運転で生まれる余裕を、広々とした空間ですべての乗員と楽しむような車を目指した。

駆動システムでは4輪制御技術「e―4ORCE(イーフォース)」を開発。前後に搭載した2基の駆動用モーターと4輪の各ブレーキを繊細に制御し、スポーツ車並の運転性能を実現した。

中型SUVセグメントは世界で市場拡大が見込まれ、500万円以上の実質購入価格を見込むアリアの拡販が期待される。ただ新型コロナウイルスの影響で景気の先行きが不透明な中、「500万円以上の車の販売が大きく伸びる市場環境ではない」(SBI証券の遠藤功治企業調査部長)との指摘もある。

5月に発表した構造改革計画では、電動化と運転支援技術で商品の魅力を高め、販売を回復する道筋を描く。連合を組む仏ルノーや三菱自動車とのアライアンスでも、日産がEV専用やCDセグメント向け車台の開発を主導。アリアはアライアンスを活用して事業の選択と集中を進め、経営資源を重点投入する分野の車であり企業連合の行方も左右する。

一方、EV市場固有の難しさについて遠藤企業調査部長は「電池の劣化などで、買い替え時の下取り価格が従来の車と比べて低いことが購入をためらう一因となっている」とも指摘。リーフの知見も生かして開発し、搭載した電池の温度調整システムは劣化を防ぐ効果もあり購入時の不安解消にもつながりそうだ。日産の先進技術を集めた新たな車の価値が受け入れられ、ブランドを再構築できるかが注目される。

広い車内空間を実現

日刊工業新聞2020年7月16日

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