存在感なき日産の電動車、「リーフ」はSUV化で名称変更も

独自ハイブリッド「eパワー」は大幅にモデル拡充

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「EV=日産」の地位は米テスラに奪われた。写真は「リーフ」(同社公式サイトより)

電気自動車(EV)「リーフ」を発売してから10年目。日産自動車の電動車戦略が、2020年度から新ステージに入る。EV、独自のハイブリッド車(HV)「eパワー」を2本柱に設定。車種ラインアップ拡充と、商品力向上に取り組む。リーフを大幅刷新する検討も始めた。ただ自動車メーカー各社が電動車を強化しており、競争激化は必至。日産は電動車戦略を経営再建の切り札に据えるが、先行きは楽観視できない。

日産は20年度以降、主要市場に電動車を積極投入する。日本では初めて国内導入するSUV(スポーツ多目的車)「キックス」、SUV「エクストレイル」の新モデルにeパワーを設定し、全面改良する小型車「ノート」にも引き続き同仕様を用意する。EVでは初めてSUVや軽自動車を投入する。現在、主な電動車はリーフや中国専用EV「シルフィ ゼロ・エミッション」、eパワーのノートとミニバン「セレナ」にとどまっており、大幅なモデル拡大となる。

商品力向上を図る点も見逃せない。VCR(可変圧縮比)エンジンで1500ccを開発し、中型のeパワー車に搭載する。また既存の小型エンジンをeパワーに合わせて改良し、ノートなど小型車に搭載する。eパワー車はエンジンを進化させ、燃費と走行性能の両方を高める戦略だ。EVでは、前後に計二つのモーターを搭載する4輪駆動技術を独自開発し、乗り心地を高める。一方、高級セダン「スカイライン」などに設定するパラレル式HVは、競争力が確保できておらず「注力分野ではない」と複数の日産幹部が明言しており縮小方向だ。

リーフを巡っては24年の全面改良のタイミングで大幅刷新する検討を始めた。全体サイズは維持しながら、ボディー形状を現在のハッチバックからSUVに変更する案が挙がる。発売時の想定を下回る販売が続き、人気のSUVに衣替えして、テコ入れする。今後、24年までに他の複数案が検討されると見られるが、日産幹部は「『リーフ』という名前をどうするかという段階から考え直す」と明かす。

日産の電動車戦略の本格スタートは10年にさかのぼる。この年、10年ぶりに自社開発のHV「フーガ ハイブリッド」を発売したほか、リーフの投入で他社に先駆けてEV市場の開拓に乗り出した。それから10年の節目で電動車戦略の第2幕が開ける。

日産は19年10―12月期連結決算で、当期損益が260億円の赤字(前年同期は704億円の黒字)に転落するなど業績悪化が深刻化する。固定費削減という守りと、新モデルの積極投入という攻めを組み合わせた経営再建を進める方針。その中で電動車戦略が命運を左右する。

先行きは楽観視できない。日産の電動車戦略の第1幕は成功したとは言いがたい。「リーフで一時期に築いた『EV=日産』との地位は米テスラに奪われ、ブランド力は頼りない」と日産と取引の多いサプライヤー首脳は指摘する。低価格帯EVで存在感を示す中国メーカーにもおされる。

日本で一定の評価を得たeパワーは、海外展開はこれからで消費者に受け入れられるか未知数だ。ある日産幹部OBは「世間があっと驚くような高性能な電動車が必要」とブランド再構築の必要性を説く。

世界各国の環境規制が強化される中、自動車メーカー各社が電動車を積極投入する。トヨタ自動車は25年にHVを中心に電動車を550万台以上販売する計画。EVでは20年に自社開発モデルの投入をはじめ、20年代前半には10車種以上を品ぞろえする方針。

独フォルクスワーゲン(VW)は、政府補助金を活用した実質価格を既存の主力車「ゴルフ」並みに抑えたEVの戦略モデル「ID.3」の納車を今春にも始める。EVを筆頭に電動車を巡る競争が主要市場で激化する。

日産の内田誠社長は「EVなどの新モデルでモビリティーのブレークスルーを提案する」と強調する。厳しい環境下で、電動車をけん引役とした経営再建を思惑通りに進められるか―。日産の底力が試されている。

(編集委員・後藤信之、渡辺光太)

日刊工業新聞2020年3月10日

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