ニュースイッチ

日産の反転攻勢を背負う「キックス」、激戦SUV市場で“タイ産”は受け入れられる?

事業構造改革の勢いを出せるか
日産の反転攻勢を背負う「キックス」、激戦SUV市場で“タイ産”は受け入れられる?

「電動化と自動運転技術のリーダーとして市場をけん引したい」と星野副社長

日産自動車は24日、小型スポーツ多目的車(SUV)「キックス」を30日に日本で発売すると発表した。人気が高い独自のハイブリッド車(HV)システム「eパワー」の性能を高めて搭載する。経営再建中の同社はeパワーなど電動車を積極投入し、業績の立て直しを図る。新型車の販売を軌道に乗せ、反転攻勢に向け“勢い”をつけられるかが注目される。

日産は2023年度までに国内で新たに4車種のeパワー搭載車の投入を計画する。星野朝子副社長は同日のオンライン発表会で「電動化と自動運転技術のリーダーとして市場をけん引したい」と今後の新車投入の先陣を切るキックスに期待を寄せた。

日産が国内に登録車の新モデルを投入するのは10年ぶり。キックスは駆動システムとしてeパワー搭載車のみを販売する。運転支援技術「プロパイロット」を標準搭載し、安全性能も高めた。価格は消費税込みで275万9900円から。販売目標は示さなかった。

eパワーはエンジンを発電のみに使い、モーターで駆動する。加速力などで電気自動車(EV)と同様の乗り味を実現したのが特徴。従来と比べ電池やモーターの制御を磨き、最大出力を約20%高め、応答性が良く力強い走りを可能にした。

これまでeパワー搭載車は日本のみの販売だったが、6月にタイでeパワー搭載のキックスの販売を予定する。日本ではタイから輸入して販売する。SBI証券の遠藤功治企業調査部長は底堅いSUV市場への新車投入は期待できるが、他社も含め日本で苦戦が続いている「タイ製車両が受け入れられるかは分からない」と懸念を示す。

日産は5月に発表した23年度までの事業構造改革計画で、電動化と運転支援技術を成長のけん引役に位置付け、販売回復を目指す方針を示した。世界では中小型車を中心にeパワー搭載車を積極的に拡大。中国や欧州などで販売を伸ばし、EVを含めた電動車の販売台数を23年度までに19年度比約5倍の100万台以上に引き上げる目標を掲げる。

SBI証券の遠藤企業調査部長は、同計画発表から最初の新型車となるキックスで販売を着実に伸ばし、「計画を推進するための勢いを出せるかが重要になる」と指摘している。

(取材=西沢亮)

日刊工業新聞2020年6月25日

編集部のおすすめ