豪雨がもたらす土砂災害、防ぐには地盤をとことん研究する必要がある

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日本で土砂災害が多い理由 豪雨による土砂災害の種類

日本には山地が多いことに加え、多雨地帯に属すため雨が多く降ります。年平均降水量は世界平均の約2倍です。また、降雨の季節変動が大きく、台風も多く襲います。そのため、山地では毎年のように台風や豪雨による災害が発生しています。これらの災害として①急傾斜地の崩壊、②土石流、③地すべりがあり、これらを合わせて土砂災害と呼んでいます。

急傾斜地の崩壊のうち小規模なものは、各地で頻繁に発生しています。山地だけでなく、丘陵地や台地でも発生しています。大規模な崩壊は台風などの豪雨が襲った場合に発生します。例えば、2013年の台風26号では伊豆大島で最大時間降雨量が118.5mm、連続降雨量が824mm猛烈な雨が降りました。このため、西側斜面の広い範囲で大崩壊が発生しました(図1)。この地区は溶岩の上に火山灰が堆積しており、その表層土がすべったものです。

図1 2013年の台風26号で崩壊した伊豆大島の斜面

山地の斜面で崩れた多量の土石が谷に流れ込むと、水と土が混じって土石流となって猛スピードで下流へ流れていきます。大玉石が先頭になって流れていくので、途中にある構造物を破壊する力も強大になります。例えば、広島市安佐南区では2014年に最大時間降雨量115mm、総降雨243mmの豪雨が降り、風化してまさ土になっていた斜面の表層が崩壊し、土石流となって流れました。この地区は1970年代頃から宅地開発が進み、沢の出口まで家が建てられていました。家屋は破壊され、夜間に土石流が発生したこともあり、77名もの犠牲者がでました(図2)。

図2 広島で発生した土石流による住宅の被害

地すべりの定義は明確ではありませんが、緩やかな傾斜地盤が雪融けや降雨時にゆっくり滑ることを指すとしています。すべりがしばしば発生している所を地すべり地と呼んでおり、各地に点在します。特に新潟県から長野県にかけて多く、毎年雪融け時に地下水位が上昇してすべることを繰り返しています。(「今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい地盤工学の本」より一部抜粋)

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<書籍紹介>
様々な土によって構成されている地盤。地形によって地盤は異なり、防災の面からも地形の成り立ちを知ることは重要である。建築時には、工事中に構造物が変形しないよう、建築後には地震や豪雨などの被害を受けないよう設計する必要がある。地盤や液状化の専門家が学問的視点から地盤を捉える。

書名:今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい地盤工学の本
著者名:安田 進
判型:A5判
総頁数:160頁
税込み価格:1,650円

<執筆者>
安田 進(やすだ すすむ)
工学博士、技術士(総合技術監理部門、建設部門)、土木学会特別上級技術者(地盤・基礎)
専門分野:地盤工学、土木工学、地震工学
1948年  広島市生まれ
1975年  東京大学大学院工学系研究科博士課程修了
1975年  基礎地盤コンサルタンツ(株)入社
1986年  九州工業大学工学部 助教授
1994年  東京電機大学 理工学部 教授
2006年  地盤工学会副会長
2012年  土木学会理事
2013年  日本地震工学会会長
2016年  東京電機大学副学長
2018年  同大名誉教授
<受賞>
1987年 土木学会論文賞
2011年 地盤工学会研究業績賞
2011年 国土交通大臣賞産学官連携功労者表彰
2012年 ガス保安功労者経済産業大臣表彰
2018年 科学技術分野の文部科学大臣表彰(理解増進部門)
2019年 令和元年安全功労者内閣総理大臣表彰
<主な著書>
『液状化の調査から対策工まで』鹿島出版会、1988年
『土質力学』(共著)オーム社、1997年
『建設技術者を目指す人のための防災工学』(共著)コロナ社、2019年ほか

<目次(一部抜粋)>
第1章 地盤ってなに?
さまざまな土 「地盤を構成する土の種類」/地形により地盤は違う 「山地、丘陵地、台地、低地の地盤の特徴」/川の流れで大地は造られた 「河川沿いの低地の地盤の成り立ち」

第2章 地盤の力学
必要な地盤情報は構造物ごとに違う 「建設時に知っておくべきこと」/粒子と水と空気から成る土 「土粒子、間隙水、間隙空気」/土独特の定義を知ろう 「土の物理量の基本」

第3章 地盤を知るには
地盤内を知る方法 「多種多様な地盤調査」/設計に最も用いられるN値の測り方 「ボーリング孔による詳細な調査 ・ 試験」/開発進むサウンディング 「種々のサウンディング」

第4章 地盤改良と盛土・斜面補強
改良や補強すると土は強くなる 「地盤改良と補強の種類」/軟弱粘土地盤の改良 「圧密沈下への対策」/軟弱粘土地盤でより一層強度を増す方法 「すべりの防止、支持力を増強」

第5章 地盤工学と建設
即時沈下、圧密沈下、支持力を検討 「浅い基礎」/鉛直と水平方向の支持力を検討 「深い基礎」/すべり安定性に影響するのり面勾配 「道路や宅地の盛土」

第6章 地盤災害と対策
浅層地盤で決まる地震の揺れ 「地震の揺れと浅層地盤の関係」/建物は沈下し、マンホールは浮き上がる 「液状化による構造物の被害」/日本で土砂災害が多い理由 「豪雨による土砂災害の種類」

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