まずは想像することが大事かも?気候変動がもたらすリスクを把握しよう
森林火災→木材高騰/雪不足→スキー場苦境
気候変動が進行すると、事業はどのような影響を受けるのか。投資家が上場企業に対し、自然災害からの被害を予測して開示するように迫っている。環境省は投資家からの要請に応える指南書となる「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」を発刊した。
気温の上昇や環境規制強化など、想定を変えて将来の影響を予測した12社の事例を紹介している。住友林業は気温上昇が進むと森林の火災や害虫被害が増加し、住宅の材料である木材調達コストが高騰すると予想した。一方、気温上昇を抑える政策がとられると、エネルギー消費を実質ゼロ化した住宅(ZEH)市場が成熟化する。
東急不動産ホールディングスは、温暖化による雪不足でスキー場の営業にマイナスの影響が出ると分析。最新鋭の降雪機を導入してプラス化する検討をした。ライオンは異常気象によって植物原料の栽培面積が減ると、調達コストがアップすると見通した。
最近のハリケーンや干ばつが企業財務にダメージを与えており、海外の投資家が将来の影響に注目するようになった。日本でも毎年のように台風や豪雨被害が起きている。将来とはいわず、目の前の被害を軽減する戦略立案も急がれる。
日刊工業新聞2020年4月10日
気候変動リスク、45%未対応 東京海上日動が企業調査
弱い危機意識浮き彫り
東京海上日動火災保険と東京海上日動リスクコンサルティングが215社を対象に、企業の気候変動リスクへの対策・対応状況を調べたところ、「現時点ではいずれも実施しておらず、今後も予定がない」との回答が45・6%を占めて最も多かった。理由として「他に対応すべき優先課題があるため」とする声が目立った。地球温暖化などが及ぼす悪影響のリスクが二の次にされている状況を浮かび上がらせた。
【今後検討27%】
気候変動リスクへの対策・対応状況については「いずれも実施していないが、今後検討・実施予定」が27・0%で続く。これに「企業のビジネス、戦略、財務計画に及ぼす影響把握」(13・5%)、「気候関連リスク・機会についての評価と管理」(12・6%)が次いだ。
「気候関連リスク・機会に関するガバナンス体制の構築」(10・7%)はかろうじて10%台に乗ったものの、「評価・管理のための指標や目標の設定」(8・4%)、「気候関連シナリオ分析の実施」(5・6%)はともに1割にも満たず、地球温暖化などへの危機意識は強くない。
【優先課題ある】
気候変動対策・対応に取り組んでいないと回答した156社を対象にその理由を聞いたところ(複数回答)「他に対応すべき優先課題があるため」が55・8%を占めてトップ。これに「自社にあまり影響がないと判断しているため」(40・4%)が続き、ともに4割を超えた。
【対策・対応後手】
「取組時間・人員の不足」(32・7%)、「実施体制が構築できていないため」(32・1%)、「知識・情報・ノウハウの不足」(31・4%)も、いずれも3割を超えて目立った。わずかながらも「経営層の認識不足」(6・4%)もあり、対策・対応が後手に回る恐れもありそうだ。
一方、今後重点的に推進したいリスクマネジメントに関する取り組みは「コンプライアンス体制の充実」「情報セキュリティー対策の充実」が過半数を占めた。
また「地震想定のBCM・津波対策」「メンタルヘルス対策やワークライフバランスの充実」がともに4割超で目立った。
同調査は「リスクマネジメント動向調査2019」に盛り込まれた。上場企業と従業員数規模2000人以上の非上場企業を対象に実施し、215社から回答を得た。