複合機?専用機?進化続ける工作機械、基本をおさらいしよう
マシニングセンタベースの複合加工機
形状をつくる方法は切削や研削、レーザ加工など加工後に質量が減少する「除去加工」、プレス加工や鋳造、鍛造、射出成形など材料の質量が変化しない「変形加工」、積層造形や溶接など材料の質量が増加する「付加加工の3種類に大別されます。
工作機械は高精度化、高速化、高機能化、多軸化、省エネ化などの性能を向上させてきましたが、基本的には1台の工作機械はそれぞれの加工法に特化し、専用機として進化してきました。しかし近年では、ニーズの多様化とさらなる生産性の向上(低コスト、短納期)、高付加価値化を追求するため、複数の機能をもつ複合加工機が開発されています。
最も一般的なのは、マシニングセンタに旋削機能を複合化させた機械です。マシニング機能では主軸に工具を取り付け、高速回転させ、切削加工を行います。旋削機能としては、バイトを取りつけた主軸を固定し、工作物を回転させ、旋削加工を行います。これによって、タービンブレードの加工やギヤスカイビング加工も可能になります。
図1は5軸マシニングセンタ(切削加工)に金属積層造形の機能を備えた複合加工機です。その他にも、摩擦撹拌接合(FSW: Friction Stir Welding)の機能をもつ機械もあります。図2のように接合ツールと呼ばれる棒状の工具を高速回転させて接合したい材料に押し付け、摩擦熱によって材料を軟らかくし、軟化させた部分を撹拌して接合します。異なる材質の接合も可能です。従来は比較的融点の低いアルミニウム合金や銅合金などの非鉄金属が中心でしたが、最近では鉄鋼やチタン合金など、融点の高い金属の接合も可能になっています。
また、部品の損傷部分を切削で取り除き、削った部分を積層造形して部品の修復をする機種や、レーザで焼入れをして研削加工で仕上げることが可能な機種もあります。
(「今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい工作機械の本 第2版」より一部抜粋)
工作機械は「マザーマシン」とも呼ばれ、機械工業の土台と言われている。日本のものづくりは工作機械に支えられているといっても過言ではない。本書は、工作機械とは何かから始まり、その仕組みや種類、加工方法から最新の工作機械事情まで盛り込んだ入門書である。
書名:今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい工作機械の本 第2版編著者名:清水伸二、岡部眞幸、澤武一、八賀聡一
判型:A5判
総頁数:160頁
税込み価格:1,650円
<執筆者>
清水伸二(しみず しんじ)
日本工業大学工業技術博物館館長、同大学客員教授、上智大学名誉教授、MAMTEC代表(技術コンサルティング事務所)、工学博士
岡部眞幸(おかべ まさゆき)
職業能力開発総合大学校能力開発院教授・教務部長、工学博士
澤 武一(さわ たけかず)
芝浦工業大学デザイン工学部デザイン工学科教授、博士(工学)
八賀聡一(はちが そういち)
元・日本工作機械工業会事務局長
<販売サイト>
Amazon
Rakutenブックス
Yahoo!ショッピング
日刊工業新聞ブックストア
<目次(一部抜粋)>
第1章 工作機械って何?
機械とは/産業に役立つ機械/マザーマシンと呼ばれる工作機械/工作機械は、一般の機械とどこが違うのか/工作機械の基本的な種類
第2章 工作機械が動く仕組み
工具・工作物が正確に回転する仕組み/工具・工作物がまっすぐ動く仕組み/工具を自動交換する仕組み/工作機械の制御装置/図面情報の流れとNCプログラムの仕組み
第3章 工作機械に求められる特性
工作機械に働く力の種類と特質/振動に強くするためには/高い精度で動かすためには/長い間使えるようにするためには/省スペース・コンパクト化を実現するためには
第4章 基本的な工作機械
旋盤/フライス盤・中ぐり盤/ボール盤/平面研削盤/放電加工機/金切りのこ盤
第5章 工作機械で出来る基本的な加工
旋盤で行う加工/フライス盤・中ぐり盤で行う加工/ボール盤を用いた加工とその工具/研削盤で行う加工/表面仕上げ工作機械で行う加工/放電加工機で行う加工
第6章 付加価値を追求する工作機械
5軸制御マシニングセンタ/グラインディングセンタ/超精密加工機/超大形工作機械/レーザ加工機/超音波加工機/金属積層造形装置/IoTとAIを活用する工作機械
第7章 工作機械の歴史
工作機械の生い立ち/機械構造と送り機構の変遷/各種の工作機械開発/日本の工作機械の歴史