熱処理や溶接、切断まで。さまざまな加工に使用されるレーザー

おすすめ本の抜粋「わかる!使える!レーザ加工入門<基礎知識><段取り><実作業>」

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レーザ発振器の種類 レーザ発振器

加工用の高出力レーザはガスレーザと固体レーザに大別されます。板金加工用のガスレーザには従来からCO2レーザが使用されており、図1-1-1に示す通り放電の方向、レーザガス流の方向、およびレーザ光の出射方向の違いによって、①三軸直交型と②高速軸流型があります。発振器の構成は異なりますが、ともにレーザの発生原理はCO2を含む混合ガスを励起媒質(レーザ光発生源)とし、放電で励起します。レーザ発振器から出射したレーザ光は、複数のミラーによって反射され加工ヘッドまで伝送されます。

固体レーザでは従来、YAG(Yttrium Aluminum Garnetの略)と呼ばれるガラス状の結晶(固体)をランプまたは半導体レーザで励起するレーザが使われていました。しかし、連続した高出力を使う場合に、YAGロッドの中に熱レンズ効果と呼ばれる熱ひずみが発生し、レーザ光の品質を悪化させる課題がありました。そこで、この熱レンズ効果を低減するために、図1-1-2に示す励起媒質にファイバの結晶を用いた①ファイバレーザと、励起媒質に板状(ディスク状)の結晶を用いた②ディスクレーザが開発されました。これらのレーザ光は加工ヘッドまで光ファイバによって伝送されます。また、半導体レーザによる樹脂や金属の直接加工も行われています。ただし、半導体レーザによる加工対象を金属材料とした場合は、切断での集光性が不十分なため、使用範囲は一部の切断と熱処理や溶接などの用途に限定されています。

加工への影響

表1-1-1には各種発振器からのレーザ光の波長を示します。加工レンズで集光したレーザ光は基本的にその波長が短いほど小さなスポット径に絞られます。小さなスポット径ほど高エネルギー密度が得られるため、金属を溶融する能力が高まり高速度の加工が可能になります。また、波長はワーク(被加工物)のビーム吸収特性にも影響します。

図1-1-3はレーザ光の波長と各種材料の吸収波長域を示しており*、波長が短くなるほど各種材料の吸収率が高くなります。高出力半導体レーザのアルミニウムに対する吸収率は、ファイバレーザの2倍、CO2レーザの10倍にもなり、熱処理や溶接の用途が広がっています。しかし、半導体レーザの最大の課題は前述した集光特性が低いことであり、集光特性改善の研究は切断分野への適用拡大につながるとして期待されています。

要点ノート

金属加工用のレーザ発振器は、CO2レーザからファイバレーザに移行が着実に進み、今後もこの傾向は続くと想定します。しかし、ステンレスの切断面品質や非金属加工の要求にはCO2レーザの優位性が残っています。

参考文献
*中野正和:最近の吸収率データ、ALEC、JWES、LMP委員会、2000LMP-本-09(2000)
(「わかる!使える!レーザ加工入門<基礎知識><段取り><実作業>」より一部抜粋)
<書籍紹介>

レーザ加工は、高エネルギー密度のレーザ光を被加工物に照射し、溶融や除去、組織変化などを起こす加工方法。自動車、電機などの産業で、生産手段として急速に広がっている。本書は、レーザ加工の実作業に取り組む上で身に着けるべき知識を体系的に解説する。

書名:わかる!使える!レーザ加工入門<基礎知識><段取り><実作業>
著者名:金岡 優 著
判型:A5判
総頁数:172頁
税込み価格:1,980円

<著者>
金岡 優(かなおか まさる)
三菱電機株式会社 産業メカトロニクス事業部主席技師

1983年 北海道大学大学院修士課程修了、1983年 三菱電機株式会社入社、同社名古屋製作所配属、1993年 学位(工学博士)、1997年 同社レーザシステム部加工技術課長、2000年 同社レーザシステム部品質保証課長、2002年 同社GOSグループマネージャー、2013年 同社産業メカトロニクス事業部主管技師長、2018年~現職。その間、名古屋大学非常勤講師、光産業創成大学院大学客員教授、北海道大学客員教授も歴任。

<主な著書>
「機械加工現場診断シリーズ7 レーザ加工」(日刊工業新聞社)1999年
「絵とき レーザ加工の実務 作業の勘どころとトラブル対策」(日刊工業新聞社)2007年
「絵とき レーザ加工の実務 第2版 CO2&ファイバレーザ作業の勘どころ」(日刊工業新聞社)2013年
「レーザ加工で進める工法転換 製品設計に必ず役立つ実践ノウハウ」(日刊工業新聞社)2016年

<販売サイト>
Amazon
Rakutenブックス
Yahoo!ショッピング
日刊工業新聞ブックストア

<目次>
第1章 レーザ加工機の構造・仕組み・装備
1 レーザ加工機の種類と特徴を知ろう
2 レーザ加工機の装備と仕組みを知ろう
3 レーザ加工機の周辺装置と仕組みを知ろう

第2章 レーザ加工における段取りの基礎知識
1 レーザ加工の基本を知ろう
2 集光特性の加工への影響を知ろう
3 アシストガスの加工への影響を知ろう
4 稼働前の確認事項を知ろう
5 ワーク座標系とNCプログラムを知ろう
6 ワークの準備と治具の準備を知ろう

第3章 レーザ加工機の実作業と加工時のポイント
1 加工品質の確認内容を知ろう
2 加工条件とその求め方を知ろう
3 切断において押さえるポイントを知ろう
4 溶接・熱処理において押さえるポイントを知ろう
5 穴あけにおいて押さえるポイントを知ろう
6 メンテナンスの大切さを知ろう
7 加工時間と加工コストの算出方法を知ろう

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