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10万台以上が稼働する東芝のエレベーター、「点検・修理」の進化が止まらない

10万台以上が稼働する東芝のエレベーター、「点検・修理」の進化が止まらない

東芝エレベータのメンテナンス作業

東芝エレベータ(川崎市幸区)は昼夜問わず10万台以上のエレベーターの運行状況を監視している。「昇降機を安全・安心・快適に運行させるため、日々のメンテナンスやシステムによる遠隔監視が非常に重要だ」とフィールドサービス部長の大野雅隆は強調する。

24時間365日の常時監視はすでに業界の常識であり、同業他社との差別化は効率的なメンテナンスと、自然災害など緊急事態対応にかかっている。東日本と西日本を担当するサービス情報センター2カ所が司令塔となり、平時の状態監視とともに、有事のサービス拠点への出動指示などを出す。

大野は「全国約230カ所に営業所・サービス拠点を有するほか、14カ所の支社店にメンテナンス部品のパーツセンターを構える」と万全の体制に胸を張る。そんな昇降機保守に役立つ最新の武器が、同じグループの東芝デジタルソリューションズ(同)と共同開発した地図システムだ。

故障や災害が発生した建物を特定し、情報センターの監視モニターに物件の位置情報を表示する。地図上で最も近いフィールドエンジニアを割り出して出動指示を送り、現場に急行させる。エンジニアの到着時間などを顧客に伝えることで不安解消にもつながる。

近年、地震や豪雨などの自然災害が多発しており、重要な生活インフラのエレベーターも災害対応は不可欠。東芝エレベータが開発に力を入れているのが自動復旧運転機能だ。

地震で運転を休止すると、復旧には通常エンジニアによる点検が必要となる。機器に故障がなくても、現地到着まで待たなければならない。それに対して、休止後に自動診断で運転可能と分かれば点検を待たずに「仮復旧運転」できるのが自動復旧運転機能の仕組みだ。

従来の地震感知器ではなく主要機器に加速度センサーを配置し、実際の揺れの計測精度を高めることでエレベーターの仮復旧運転確率を従来比20%向上させる技術を開発した。現在商品化を急いでおり、2020年度上期の販売開始を目指している。

東芝社長の車谷暢昭は「特に災害時においてはインフラを止めないため、あるいは早期復旧のため、メンバー全員が高い責任感を持ち一致団結した対応が求められる」と自覚する。昇降機も国民生活の基盤だ。大野は「メンテナンス業務の主役はフィールドエンジニアだ」と断言する。人材こそがインフラ企業の競争力の源泉だ。(敬称略)

日刊工業新聞2020年5月21日

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